※24/25 イングリッシュプレミアリーグ
アーセナルvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
オープンプレーの中で為す術なく負けたという訳ではなく、前半はむしろエミレーツのアーセナルを完全に抑え込んでいた位だったので希望を持てる内容だと思う。セットプレーに関しては過去の体制での上積みがあまりにも無かった結果。
Arsenal take the points.#MUFC || #ARSMUN
— Manchester United (@ManUtd) December 4, 2024
【Match Review】
Starting lineup
前半
ホームのアーセナルはアンカーにトーマス・パーテイが入る4-1-2-3、アウェイのマン・ユナイテッドはこれまでとは違い両WBにフルバック本職の選手を利き足サイドに配置した3-4-3でゲーム開始。
本格的に強い相手と戦うのは今回が初めてというアモリム体制だが、プレッシング強度のあるチームに対してのGK含めた3-2ビルドアップの脆弱性が明らかになったのは4分のシーン。
ボールを奪われた後のアーセナルのカウンターはオフサイドポジションにいたハヴァーツを経由したので運よく失点こそ回避したが、横パスの距離感が長くなって実質選択肢から消え、なおかつ背中でパスコースを消しながらボールホルダーに詰め寄れる相手がいると数的同数でも実質的に数的不利と同じ状況に陥るためオナナ横にもう1人選手を配置(CBの前スライドをやめる)して4-2で距離を狭めながら出し先を増やすように安全重視で運用するべきだろう。
ユナイテッドの守備面で言えば、右ウイングで違いを生み出すサカに対してはマラシア,マズラウィ,ガルナチョのうち必ず2名以上で時間をかけて対応し、決して単独で飛び込まない事を共有しながら対処。一方のマルティネッリ対面は彼が単調なプレーを選びがちなこともあってダロト1人で完封する事が出来た。久々に利き足サイドでプレーしたダロトは窮屈なボールプレーが減って持ち前のダイナミックさと対人の強さで活き活きとしていたのが印象的。
基本的には片方に主導権が渡る事無くほぼ5分5分で進んでいったエミレーツ・スタジアムでのリーグ第14節、ホームのアーセナル相手に新体制発足から間もないユナイテッドが食らいつけた理由としては、ディフェンシブサードからミドルサードにかけてのポゼッションで急がなかった事が挙げられる。
具体的にはマズラウィ,マグワイア,デ・リフトの3枚で横パスを挟みながらスローペースでじんわりとボールを前進させ、プレスをかけるアーセナル守備網がすこし崩れたタイミングでマラシア,ダロトの両WBへボールを供給して相手の前線守備を突破するという形がハマっており、特にダロトvsジンチェンコ対面では明確にこちらが優位性を持っていたので右サイドからの打開が多くなった。
また、セントラルMF2枚の役割分担についても定まってきた印象で、テン・ハフ時代によく見られた中盤が横並びになってしまいプレス回避が難しくなるという場面がかなり減少している。割合としてはブルーノ7,ウガルテ3でCBからのパスの受け手を務めていた印象。
ほとんど相手ゴールに迫るシーンの無かったユナイテッドだが、FKからの2次攻撃で最終的にダロトがボックス内でシュートを放った43分のチャンスでは珍しくアーセナルの集中が一瞬切れていたのでこれを得点に出来ていればその後の試合展開も違っていたかもしれない。結果論で語りたくはないがせめて枠に飛ばしたかったのも事実。
後半
アウェイチームはマラシアに代えてアマドを投入しダロトを左WBへ持っていくアモリム体制ではおなじみとなっている形へ変更。
アマドがいかに今のチームで重要な存在になっているかを端的に表す事実として、それまでユナイテッドの両ワイドの4人(マラシア,ガルナチョ,ダロト,マウント)の大外でのボールキャリーに関して1on1で対応していたアーセナルが彼に対しては2人以上で挟み込みにいくようにして対応しており、相手目線でも明確に脅威として認識されている事が確認できた。
前半からファーポスト付近に選手を固めてそこから一斉にポジションを取っていく一風変わったCK初期位置を採用してユナイテッドのゾーン/マンツーマン併用体制の脆さを突こうとしていたアーセナルは6本目のコーナーで遂にその努力が実る。
53分、左CKからライスの蹴ったインスイングキックはストーン役のブルーノの頭上を越え、ニアポスト前に入ったティンバーが叩きつけるのではなく頭に掠めて軌道を変化させる技ありのヘディングでゴールネットを揺らした。
膠着した試合
— U-NEXTフットボール (@UNEXT_football) December 4, 2024
アーセナルが得意のセットプレーから
均衡を破る🔥
ティンバーはシーズン初ゴール👏
🏆プレミアリーグ 第14節#アーセナル v #マンチェスター・U
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60分手前からは一気に3選手を入れ替えてヨロ,ジルクゼー,ラッシュフォードが投入されたが、想像通りジルクゼーのシャドーはプレー傾向やテンポの問題等々で全くフィットしそうになく、このラインナップならばホイルンドをRWにスライドさせた方が良かった。概ねベルバトフだと考えて運用するのがベターだろう。
ついにマンチェスター・ユナイテッドでの公式戦デビューとなったヨロについては、試合展開やまだ彼自身へのチームメイトの信頼が積もりきっていない事などもあるのかボールプレーの評価を出来るほどの何かがあった訳ではないが、守備動作を見ると相手がロングボールを蹴ろうとする瞬間の背後へのケアの始動の早さや全体的なステップワークの器用さなどポテンシャルの高さを伺い知れたのでその点では収穫あり。
ただし、試合の方はそうポジティブな話題ばかりではなく、73分にはまたしてもコーナーキックから今度はファーサイドでフリーになっていたトーマスの折り返しをゴール前でサリバが意図したものか不明だが腰で軌道を変えてアーセナル追加点。
追加点はまたしても
— U-NEXTフットボール (@UNEXT_football) December 4, 2024
コーナーキックから⚽️
今度はサリバがシーズン初ゴール👏
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ユナイテッドのセットプレー守備の稚拙さは今に始まった事ではなく、少なくともオーレ期には重大な問題として存在していた要素なので、就任間もないアモリムがいきなり改善出来る事柄ではないだろうと考えている。それにオープンプレーの課題解決を優先しているのは明確なので、しばらく落ち着くまでは今後も未着手なこの部分からの失点は避けられないかもしれない。
ゲームはそのまま2-0から動かず、ユナイテッドはルベン・アモリム体制での初敗戦となった。
データ
Standard
ポゼッションは50:50でパス本数も僅かにユナイテッドが上回っているように流れの中の主導権についてはある程度善戦した部分もあったものの、シュート数で3倍の差をつけられているように相手に与えた脅威という観点では明確にアーセナルの方が上だった。
また、13本という飛びぬけた数のコーナーキックが示しているようにホームチームは明確にアウェイチームの長年のアキレス腱であるセットプレー対応に狙いをつけており、2ゴールいずれもがCKからのゴールだった事は敵将ミケル・アルテタにしてみればしてやったり、会心の勝利だったのではないか。
ユナイテッドにとって苦しかった点は相手のMF3枚(ウーデゴール,トーマス,ライス)が全員守備面で広範囲をカバー出来てインテリジェンスも備えているタイプだったという事。4バックvs3バックでギャップになりやすいウイングバックに対しても、相手LBジンチェンコは正直危うい対応が多かったがライスのカバーによって致命傷にはならず、ウーデゴールも選択肢を奪いながらタッチライン際に追い込んでいく内→外へ押し出す守備が上手いので中々思うようにサイドを攻略できなかった。
ゴール期待値はアーセナル2.97、マン・ユナイテッド0.26とワンサイドゲームの様相を呈しているが、それもそのはずユナイテッドはシュートを5本しか放てておらず、アーセナルはゴールエリア内だけでも2ゴールを含む4度の得点機会を作っている。
チームの根幹部分について既に根付いていて、ファー側に選手を固めてゾーン/マーク管理をごちゃごちゃにさせるピンポイントのメタに時間をかけられたホームチームと、まだ何もかもがゼロベースに近いアウェイチームとの上積みの差がそのままxGに反映された形だと個人的には捉えている。
Arsenal 2 : 0 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) December 4, 2024
▪ xG: 2.84 - 0.21
▪ xThreat: 2.16 - 0.6
▪ Possession: 50.7% - 49.3%
▪ Field Tilt: 62.5% - 37.5%
▪ Def Action Height: 52.7 - 36.6
Donations https://t.co/nlgfzDqqrU pic.twitter.com/O69xbOiNf8
PASSING NETWORKではユナイテッドのDF,MFがほぼ一直線上に並んでいるが、これはボールを持っている時でも上手く階層構造を作れず深さを使えなかった点もある程度反映されているかもしれない。特にビルドアップでの人数バランスや配置の整備については今回で明確な弱点が露呈した為、次戦以降で修正された状態を見せて欲しい。
あとがき
アマドがいないとサイドでの押し込みを作れないというのが良く分かったエミレーツでの90分。バランス的にはトップ下タイプの選手をLWに置いてRWにはFW本職を置くのがハマりそうに思うが、やはりワイドの人選を固めるにはしばらく時間を要しそうな予感をひしひしと感る今日この頃。