※24/25 UEFAヨーロッパリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsFKボデ/グリムト戦の記事です。
失点の内容は個人のエラーが大きな割合を占めているとはいえ、7割のボールポゼッションを記録したようなゲームで2失点は少々不安になる結果でもある。
3️⃣ points in Ruben's first home game 👏#MUFC || #UEL
— Manchester United (@ManUtd) November 28, 2024
【Match Review】
Starting lineup
前半
開始から40秒、ボデ/グリムトのバックラインでのパス交換の中で、CBグンダルセンからGKハイキンへのバックパスに狙いをつけていたホイルンドは短くなったパスを追いかけ、ハイキンの選択肢を奪うプレッシングでもみ合いになりながらもボールを突っつき、これをガルナチョが沈めてユナイテッドは2試合連続で電光石火の先制弾を記録した。
ユナイテッドは3-4-3継続で左CBにリチャ、前回RWだったブルーノがCMに一列降りるなど調整を加えながら最適解を探している最中。今回は対戦チームの前線プレスが抑え目でCFが中盤に吸収される4-1-5のミドル/ローブロックだったためにビルドアップ負荷が低く、特にプレッシャーから解放されたデ・リフトは伸び伸びとパスコースを探しながらボールを前進させる事が出来た。
なお、1年超の離脱を経て久々に戦列に復帰したマラシアはまだまだトップフォームから程遠く、ボールプレーの質もスプリント勝負になった際のアジリティも全てにおいて不足しており、使い続けながら戻していくのか、それとも一時的にアンダー世代に合流させて試合勘を取り戻させていくのか、個人的には後者が望ましいと考える。
ユナイテッドの守備で気になった点の1つはリチャ,マズラウィのワイドCBがタッチライン付近に釣り出された後の全体の横スライドが遅い事。この状況ではボールに関与していない方のWBが下がる事で実質4バック化するが、デ・リフトがボールサイドのハーフレーンを埋めきれておらず、これに続く選手たちもそのまま本来居て欲しい場所よりも外に位置取りする事になる為に簡単にボックス内まで運ばれてしまうケースが目立っている。
先制したホームチームだったが、正に懸念材料がそのまま失点に直結してしまったのが19分のこと。相手のロングフィードに対しマラシアが優位性のある位置取りをしていながらボールコントロールし切れず、マイボールに出来ないままクリアボールをボデ/グリムトに拾われてカウンターを食らうと、マラシアはリチャが迎撃した後のスペースを埋めておらず中央にパスを通され、最後はタイミングをずらして上がる事でペナルティアーク近辺でフリーになっていたエヴイェンが狙いすましたコントロールショットを沈めて試合は振り出しに。
完全に相手のLBがウィークポイントだと気が付いたグリムトは右サイドにボールを集中させるようになり、23分にはRBウェンバンゴモからのパスをパトリック・ベルグがダイレクトで右前方へ飛ばし、マラシアとの走力勝負に勝ったツィンカーナーゲルがそのままボックス内を陥れて右足の精密な一撃で逆転弾を奪った。
リードを奪われたものの、マズラウィ、リチャがボールを持って相手のプレッシャーを誘いながら陣形に綻びを入れ、低い位置で安易にWBにパスを入れずなるべくピッチ中央でボールを繋いでいく事で押し込んだポゼッションになる時間を増やしていくユナイテッド。ただ、ミドルサードからアタッキングサードへ侵入していく際の入り口はどうしてもWBになる為、なかなかその後の打開が出来ずもどかしい展開が続く。
更に、バックラインでボール保持している際にデ・リフトが焦ってパスをする傾向が強く、ここで相手のプレスを1~2枚誘引してからリリース出来ていれば遥かに状況のいいポゼッションだったという場面が多い為、これも今後に向けて修正が必要な箇所。
45分、相手の安易な横パスをウガルテがインターセプトして敵陣深くでボールを奪い返したユナイテッド。ウガルテからのラストパスは通らなかったものの、クリアボールをマズラウィが回収し、そのまま相手の複数枚のプレスを見事な足技で交わしていくと、ボックス手前からゴール前への狙いすましたアウトスイングクロスにホイルンドが呼応し、素早い2タッチボレーで相手GKのタイミングを外して前半のうちに同点に追いついた!!
アシスト ✨
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) November 30, 2024
フィニッシュ 😮💨
ゴール 👏
どれも一級品#MUFC || #UEL pic.twitter.com/cuOlJvbHsP
周りが彼をデコイにしたがる事もあって、機会そのものが少なすぎるだけでスコアラーとしてのスタッツは常に水準を越えているホイルンド。点取り屋らしい相手DF間を突くポジショニング→狭い空間で即座にシュート体勢へ持っていく身のこなしを見せて「我こそが赤い悪魔のエースストライカー」と高らかに宣言するかのような得点だった。
後半
折り返しの45分は明らかに試運転だったマラシアに代えてダロトが左ウイングバックへ入ってスタート。外に張りたがるガルナチョに合わせてダロトは中盤に入っていくので、前半とは左サイドの役割が大きく変化している。
48分にはウェンバンゴモの背後を取ったガルナチョにリチャから完璧なロブパスが供給され、折り返しにマウントが合わせるもシュートはクロスバー直撃で得点ならず。マウントのシャドー起用自体は非常に効果的に見えた為、今後も継続して欲しいところだ。
50分、相手陣内で押し込みながらボールを繋ぐユナイテッドは右サイドを起点にボックス内への侵入を試み、アントニーがタメを作ってウガルテへ戻すと、マズラウィ→マウントを経由してレイオフの動きでフリーになった背番号25がポケットを奪う。ウガルテはGKとDFの間に鋭いグラウンダーを通し、これにホイルンドが合わせてホームチームが再びリードを奪い返す!!
見事なフィニッシュ by ラスムス 😮💨👏#MUFC || #UEL pic.twitter.com/VD00tUeruk
— マンチェスター・ユナイテッド (@ManUtd_JP) November 29, 2024
勝ち越したユナイテッドは70分までに全てのカードを使い切る積極的な交代策出選手を入れ替え、その中にはダロト,マズラウィ酷使の一因にもなっていたショーも含まれている。
ダロトは今回もやや不安定なプレーぶりが目立ち、味方のチャンスクリエイトと同じ数だけ相手のチャンスになるエラーをするような状況なので、結局のところアモリム体制の2試合で左WBについては適任が見つかっていない。一方でCBにプレッシャーのかからない今回の試合によくフィットしていたのはデ・リフトに代わって出場したカゼミロ。相対的に中央での縦パスや対角線のフィードで安易な横パス以外の選択肢が増えた為、アタッキングサードまで安定してボールを運べるようになった。
が、試合の閉め方を忘れたままのユナイテッドは相変わらず終盤にピンチが多く、時間を使えばいい所でも急いで攻撃して逆に相手のカウンターを招く見慣れた光景+低い位置で開き過ぎてプレスの網に自ら引っかかっていくショーのポジショニング問題等で最後までヒヤヒヤさせられる中、何とかホイルンドの勝ち越し弾を守り切って勝利。ヨーロッパリーグの順位表でも12/36、上位3分の1まで上昇している。
データ
Standard
ポゼッションが7割を超えたユナイテッドのシュート数は20本。うちオンターゲット6つというのは少々数が足りていないようにも思え、本音を言えばこれが10本を越えるようなフィニッシュワークのパターンの多さと質を求めたいところ。
アモリム体制になってからは基本的に5-2の7枚が守備時に前向きでボールホルダーにアプローチできているため、レイトタックルが減少する事でファウルやイエローカードの数を前体制よりも少なく留められている印象。ただ、プレミアリーグでの戦いを考えれば前線3枚、特に両ウイングの守備貢献が不足しているようにも見えるため、欧州コンペティション仕様とリーグ戦仕様で戦い方を組み替えていく必要に迫られそうだ。
Man Utd 3 : 2 Bodo-Glimt
— markstats bot (@markstatsbot) November 28, 2024
▪ xG: 2.47 - 0.67
▪ xThreat: 1.85 - 0.54
▪ Possession: 71.9% - 28.1%
▪ Field Tilt: 83.0% - 17.0%
▪ Def Action Height: 51.2 - 38.8
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markstats算出のゴール期待値はマン・ユナイテッド2.47、ボデ/グリムト0.67でホームチームがおよそ2点分のリード。アタッキングサードでの総タッチ数に対しての各チームのタッチ数を意味するField Tiltで83:17という一方的なスコアが出ている事からも分かるように基本的にはユナイテッドが攻勢を続けた試合だったが、残り15分に限るとxTの伸びが同程度なのでこの点からも試合の閉じ方が下手くそである点が垣間見える。
PASSING NETWORKはデ・リフト以外のフィールドプレイヤーが全て相手陣内にマッピングされている特異な内容となっているが、それほど押し込めていた状況にも関わらずデ・リフトから前進する線が存在しない事については試合内容の方で触れた課題点そのままという形。
あとがき
ホイルンドが全ゴールに絡む活躍で一気にファーストチョイスへ躍り出た点については嬉しく思うが、一方でウイングバックへの対応に苦しむダロトのように新たに出てきたいくつかの課題もある。
エバートンとのホームゲームは10年以上負けの無い相性の良いカードだが、壮絶な乱打戦になる事も少なくないので油断は禁物。