※24/25 イングリッシュプレミアリーグ
アストン・ヴィラvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
失った信用を取り戻すまでにはいかない内容と結果でインターナショナルウィーク前最後の連戦は引き分け×2で終了。
Stalemate at Villa Park.#MUFC || #AVLMUN
— Manchester United (@ManUtd) October 6, 2024
【Match Review】
Starting lineup
前半
4-2-3-1ミラーとなったヴィラ・パークでのリーグ戦第7節。マンチェスター・ユナイテッドは守備時のポジショニングや各々の役割に変化があり、ブルーノ-ホイルンドが1stプレス隊となる4-4-2とブルーノ-エリクセンで相手の配球元、ティーレマンス-バークリーを埋める4-1-4-1を状況に応じて使い分けた。
ボールの奪いどころを設定せずただマンマーク気味という事だけを決めた4-2-4ハイプレスで各々の強度の低さから高い位置でボールを取り切れず、その後大きく空いたダブルピボット脇を使われ相手のショートカウンターがハマり続けた今季ここまでの状況が、ウイングのポジショニングが内側に寄って相手を外に追い出すという意図がチームとして明確になった事で改善。
一方、アストン・ヴィラは内を締める事を重視しているユナイテッドの守備パターンの影響で警戒が緩むキャッシュ,ディーニュのフルバックを起点にしてポゼッションを図るが、バークリーとティーレマンスが封じられている点やワトキンスのオフボールに対しエヴァンスが上手く対処している事などもあって中々ボールを前進させられない。ただ、ボールウォッチャーになりやすいマグワイアの周囲ではチャンスが舞い込むケースもあり、更に縦パスのコースブロックが上手ではないラッシュフォードの背後にも付け入る隙があった。
ユナイテッドの中で輝いていたのはベテランとして求められるリーダーの役目を存分に発揮していたエヴァンス。ポゼッション時にはボックス幅を意識して横に開く事でGKオナナを含む後ろ4枚でのビルドアップを分かりやすくし、守備でもボールとマークの両方を見ながら、アジリティの差で後手に回ってもしっかりと危険なコースをブロックして相手の思うようにはさせない粘り強さでワトキンス,モーガン・ロジャースという推進力のある相手アタッカーに自由を与えなかった。
また、ダブルピボットとトップ下の中盤3枚のコンビネーションも改善傾向にあり、ブルーノがサイドまで相手を追った際のメイヌーのカバーや3人のうち誰がバックスのサポートに回って誰が相手の中盤の脇でボールを引き出すかといった息の呼吸が乱れるケースが減少。序盤にエリクセンがイエローカードを提示された事で球際に強く行けなくなったマイナスがありながら相手にビッグチャンスを与えなかった理由がここにある。
逆に苦しい立場に直面しているのはアマドを差し置いて右ウイングで先発したガルナチョ。ファーストタッチでボールを垂直成分の強い叩きつけをしてしまう為にボールがバウンドしてしまい、次のプレーへの移行がスムーズに行かず、なおかつ突っつかれてしまう可能性も上がっているのでボールプレーでプラスを生み出しにくく、ラッシュフォードとの比較では上回っていてもアマドには献身性や立ち位置のセンスで負けているという守備貢献も含めて「これだ!」という明確な強みをアピール出来ていない為ジリ貧の立場。
舐めるようにボールに触れてタメを作れるタイプでないと時間・空間的猶予の少ない引いた相手に対するポゼッションでは悪い意味で浮足立つ事が増えてしまう。昨季は一時ボールタッチの質が改善したのか?と思わせた期間があったので期待していたのだがここにきて逆戻りは心情的にはもどかしい。
30分を越えた辺りから縦の圧縮が甘くなり、アストン・ヴィラに主導権を握られ始めたユナイテッド。前半の終盤はFKやCKの守備が連続し、負荷がかかったのかマグワイアが脛を抑えて座り込み、更にマズラウィも含めてハーフタイムを挟んで2人の入れ替えを余儀なくされた。
後半
リンデロフが守備的なRB、デリフトがマグワイアの代わりに右CBへ収まって後半スタート。一度緩くなってしまったネジを締めるのはそう容易い話ではなく、ユナイテッドは中盤のスペースを突かれてゴール前まで運ばれるケースが前半の最後15分同様に多かったが、ヴィランズのフィニッシュワークもやや強引にミドルショットで解決しようとする節があって自らチャンスを手放している状態。
お互いに60分を少し回ったところで戦術変更。アストン・ヴィラは思惑と違いトランジションゲームにならなかった事で存在感の無かったベイリーを下げてCFのデュランを投入し4-4-2へ。一方ユナイテッドはラッシュフォード🔁アントニー、ホイルンド🔁ジルクゼーでポゼッション色を強めていく。
ただ、すぐに効果が表れたという訳では無く、69分にはブルーノFKがクロスバーを叩いたシーンもあったものの、選手交代後もオープンプレーで明確に相手の守備を崩せた場面はそれほど多くない。
アストン・ヴィラも2トップにした事でクロスを増やしてきたが、ことごとくニアではじき返される弾道ばかりなので相手の脅威にはなりにくく、理由は違えどお互いにアタッキングサードの攻略に苦戦し続けて時間が経過するというはたから見れば面白みに欠ける展開。
審判のトラブルで試合がしばらく止まった後、アディショナルタイムに入ってから再開されたヴィラ・パークでの一戦。AT3分にはクリアボールの距離を出せなかったところから自陣内で相手に回収されたユナイテッド。途中出場マートセンのグラウンダー性のクロスをデリフトがスリップして素通りさせてしまいフィロジーンにビッグチャンスが与えてしまったものの、ダロトが身体を張ったスーパーブロックでこの危機を防いでギリギリの所で耐えきった。
結局一度もゴールネットを揺らすことなく両チーム無得点でタイムアップ。アストン・ヴィラは5位へ後退しユナイテッドはこれで3試合勝利無しと苦しい立場に。
データ
Standard
シュート数は11:10と共に二桁だが、オンターゲットの寂しさをみて直感的に分かる通り得点に結びつくような質の高いフィニッシュワークはほとんど無かった。どちらのチームも決して隙の無い堅牢なブロックだったわけではないのだが、アストン・ヴィラはダブルピボットを封じられた序盤、ユナイテッドは守備のテコ入れだけで精いっぱいで手付かずだったアタッキングサードとお互いに決め手を欠いたまま試合終了を迎えてしまった。
ゴール期待値も0.53-0.45と非常にロースコアでゴールエリア内でのシュートは一度も記録されなかった。ペナルティアークよりも後ろの場所からシュートを放ってもほとんど得点に結びつく事は無いので両チームとももう少しボールを大事にしたかったところ。
Aston Villa 0 : 0 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) October 6, 2024
▪ xG: 0.42 - 0.59
▪ xThreat: 1.22 - 0.83
▪ Possession: 54.0% - 46.0%
▪ Field Tilt: 63.3% - 36.7%
▪ Def Action Height: 45.0 - 42.7#msbot_eng #epl pic.twitter.com/Pi1RQhZnpc
アウェイチームの歪なPASSING NETWORKはミドルサードからボールを進める手段が無かった事を示唆していて、縦の階層を作れないユナイテッドの何年も続くポゼッション時の課題が見える化されている。ただし線の太さ自体はバランスが良くなっている通り、中盤3人の連携面を始めチーム全体のケミストリーは徐々にではあるが積み上がっている印象。
あとがき
さて、アウェイ2連戦の連続ドローという結果を受けてテンハフの運命は如何に。
個人的にはこの代表期間で決断をするのが一番いいと思うが、ファン・ニステルローイを筆頭に既存コーチ陣に後を任せるか、それとも外部から新たな人物を招聘してくるかの選択には検討の余地がある。