※22/23 イングリッシュプレミアリーグ
フラムvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
加入以来絶対的なチームの柱として君臨するブルーノ・フェルナンデスのプレミアリーグ通算100試合目となったクレイヴン・コテージでのフラム戦は終始苦しい展開を強いられたものの、後半アディショナルタイムに全てのフラストレーションを吹き飛ばす勝ち越し弾を決めて勝利。
— Manchester United (@ManUtd) November 13, 2022
【Match Review】
Starting lineup
右サイドに左利きのバックスを起用せざるを得ないという苦しい台所事情。ベンチにすら入っていないワン=ビサカがテン・ハフの構想に入っているかはかなり疑わしいところで、冬のマーケットで確実に補強が必要な箇所の1つ。
前半
攻撃の起点を担っていたダロトを欠くユナイテッド。左利きのマラシアがRBに入りますが、どうしてもボールを触る足は左になるのでファーストタッチが縦ではなく横になりがちで、ミッドウィークのアストン・ヴィラ戦で見せたような背後を狙うパスは皆無。前のエランガも独力で崩すタイプというよりは使われて強みが出る選手なので右サイドが全く機能せず、守備面においてもこの2人のマークの受け渡しがぎこちなく幾度も危ないシーンをフラムに作られてしまう。
更に、慣れない景色だからなのかマラシアは守備でも対人守備が普段より緩く、相手LWのウィリアンにはほぼ無抵抗でやられたい放題。ただ、彼を右に使うチーム状況に圧倒的な責任があるので彼を責める事は出来ません。
ユナイテッドボール保持時、フラムはピッチ3分の1までは追いかけて来ずにエンゲージラインはミドルサード入り口で、具体的に言えばカゼミロorエリクセンにボールが入る瞬間を狩りどころに設定しているように見えた。それならばデヘア,リチャ,リンデロフにはそれほど圧をかけて来ないのでこの3枚からじっくりと相手のズレを誘いつつ攻めたかったところだが、アウェイチームはコテイジャーズの思惑通りのトランジションゲームに持ち込んで相手の土俵に乗って戦った。
14分、パリーニャのキャリーをカゼミロがハーフウェーラインでカットすると、こぼれたボールをエリクセンが収め前方のマルシャルへパス。マルシャルは左ハーフスペースを駆け上がるブルーノへスルーボールを送り、ブルーノのグラウンダーに逆サイドでエリクセンが合わせてがら空きのゴールネットにボールを押し込む。
この先制点のようなゴールエリアを横断するパスは得点に繋がる可能性が非常に高く、今後も積極的に狙いたい形。
21分、右サイドブルーノからのアーリークロスでボックス内でラッシュフォードにフリーのシュートチャンスもミートし切れず。フラムDFラインがクロスの瞬間にオフサイドトラップをかけていたのでいずれにしても得点にはなっていなかっただろうが、トラップしてからの2タッチ目でも十分に間に合った場面なので冷静さが欲しい。
外に叩いてからのワンツー、ロングボールとシンプルながら一貫性のあるフラムの縦に速い攻撃に対処が遅れ続けるユナイテッド。仮にFWがヴィニシウスではなくミトロビッチであれば複数失点をしていてもおかしくない程にボックス内への侵入を許しており、オフサイドに救われたものの26分にはアンドレアス・ペレイラのクロスからハリー・ウィルソンが至近距離からのシュートでゴールを脅かした。
30分、GKのフィードをショーが相手陣内でカットした所からカウンター。エリクセン→ラッシュフォード→マルシャル→ブルーノ→マルシャルとダイレクトプレーでボックス内まで侵入し決定機を作るも、レノの股下を狙った9番のシュートはリフレクションで威力が弱まりゴールラインを割る前にキャッチされる。
40分、サイドチェンジや楔のパスなど中長距離のキックでフラムのブロックを揺さぶったユナイテッド。ラッシュフォードのバックパスをペナルティボックス角で受けたショーのクロスにマルシャルがヘディングで合わせるも枠を捉えず。得点とはならなかったが、全体的に縦に急ぎ過ぎるきらいがあった中珍しく良い形の攻撃。
アディショナルタイムにはマルティネスのロングフィードから一気にボックス内に侵入し、エランガのパスを受けたブルーノのグラウンダーにエリクセンが合わせるもシュートを枠を僅かに外れ前半終了。
後半
HT明けの交代は無し。
両コートを行き交う展開になった後半序盤。52分のフラムはティム・リームの対角線フィードを収めたウィルソンのクロスにヴィニシウスがボレーで合わせる。
デヘアのセーブでCKに逃れたユナイテッドだがピンチは続き、ショートリスタートから左サイドでウィルソンの上げたボールにリームがヘディング。
いつ失点してもおかしくない状況を何とか凌いだアウェイチームは1枚目の交代カードを切って中盤のテコ入れを図るが、結果的にこの変更はあまりハマらなかった。というのも、ブルーノRWは自分で持ち運べるダロトとの連携ありきで、本職でなく更に逆足サイドという事でボールプレーの貢献を期待出来ないマラシアとの縦関係ではハーフスペースでボールを受けさせる所まで中々至らない。
IN:McTominay OUT:Elanga
61分、自陣でフラムからボールを奪いカウンターへ移行したユナイテッド。エリクセンのフィードが流れた所をブルーノが何とかコート内に留めようとしたものの、ロビンソンにボールを拾われ今度はコテイジャーズのカウンター。
ウィリアンは味方のサポートを待ちながらボックス手前までキャリー、パスを受けたウィルソンがダイレクトで強いキックをゴール前に蹴ると、最後は交代で入ったばかりのダニエル・ジェームズが古巣相手に恩返し弾。ボールを奪われた場面のマラシアのポジショングやその後カゼミロ-リンデロフ間の意思疎通含め、良くない判断が連続した結果の失点。
72分のフラムはCKからパリーニャがバイシクルシュート。一時は獲得候補に上がりながらも縁が無かったが、個人的にマティッチの後継として高く評価していた選手。デュエル勝率10/13,9回のタックル成功でフィルター役として100点に近い出来。
何としても勝利が欲しいユナイテッドはマルシャルに変えてガルナチョ。リーグカップのアストン・ヴィラ戦が62分の交代で今回は+10分、前々から決めていたプレータイムなのかもしれない。
IN:Garnacho OUT:Martial
83分、マクトミネイの正確なサイドチェンジからガルナチョが相手の注意を誘いオーバーラップしたショーにパスを送ると、ショーの折り返しをマクトミネイが頭で合わせに行くがボールを抑えられず枠上へ。現状、マクトミネイのNo.10はあくまでサブプランではあるが、機会を積めばブルーノの右サイドとセットで新たなチームの武器になる可能性を感じる。
後半アディショナルタイムに突入したプレミアリーグのW杯中断前最後のゲーム。エリクセンのここしかないというスルーパスに物凄い加速で一気に相手RBボビー・リードの前を取ったガルナチョは、シュートモーションに入らずゴールに向かってパスをするかのようなキックでGKの裏をかいて自身リーグ初得点!!
What. A. Moment! 😍🔊 pic.twitter.com/3a5PkVvH33
— Manchester United (@ManUtd) November 13, 2022
この年にしてベテラン選手のような一瞬の相手との駆け引きをやって見せてしまうのですから、彼は想像を越える大器なのかもしれない。この才能をマケダ,モリソン,ヤヌザイのような形で潰してしまわないよう大切に育てていかなければならない。
データ
Standard
シュート数14:14、ポゼッション53:47とかなりフラムに攻め込まれたユナイテッド。エリクセンの先制点から前半終了までに4度の決定機を作ったものの、いずれも得点に出来なかった事がチームを大きく苦しめる事になった。
本来ならばガルナチョのゴールは圧勝している状態の4,5点目で無ければならず、破竹の勢いで勝ち点を積む順位表の上位3クラブに追いつく為にはこのゴール欠乏症状態から直ぐに脱する必要があります。
ここから1ヶ月強のリーグ中断に入りますが、インターナショナルチームに選出されていない選手を中心にテン・ハフのフットボールをみっちり浸透させて誰が出ても意識を共有できるような状態にして欲しい。
xGは1.70 - 3.38。被ゴール期待値が断トツのリーグワーストであるフラム相手に順当に多くのビッグチャンスを作った事は評価したいですが、決定力改善の兆しは未だ見えません。 特に30分,40分と2度の決定機があったマルシャルはストライカーとしてどちらかは得点にしなければいけなかった。
あとがき
もしかすると試合よりも話題になっているかもしれないクリスティアーノ・ロナウドのインタビュー動画。何故このタイミングであのような発言をしたのか未だに訳が分からず、確かに設備投資の遅れに関する指摘は至極真っ当なものでしたが、ボスであるテン・ハフやかつての相棒ウェイン・ルーニーへの批判はその場の感情任せで言うべきでは無かった。
青天の霹靂だったので正直まだ感情の整理が追いついていない……