※22/23 UEFAヨーロッパリーグ
マンチェスター・ユナイテッドvsシェリフ・ティラスポリ戦の記事です。
許したシュートが1本も無ければ勿論失点は0。守護神ダビド・デヘアに暇を与え続けるような完璧な90分でシェリフとのホームゲームを3-0で完勝!!!
A good night's work! 💼#MUFC || #UEL
— Manchester United (@ManUtd) October 27, 2022
【Match Review】
Starting lineup
マグワイア、ファン・デ・ベークが戦列復帰を果たしベンチ入り。先発にはガルナチョの名前を見る事も出来てテン・ハフにしては比較的大胆なローテーション。
リチャ(マルティネス)、ダロト、ブルーノ辺りも早い時間に交代させる事が出来るような試合運びに期待したい。
前半
序盤からユナイテッドが支配する展開。最初の5分間こそ何でもないパスを通せずカウンターを食らうような場面もありましたが、10本以上のパスを繋ぐような長いポゼッションも数多くコート3分の2まではほぼ満点に近い出来。
そして、今季は以前にもまして控えめなプレーが目立っていたリンデロフですが、相手陣内での攻撃貢献が必要な試合と理解しているからかこの日は積極的にボールを運んだり楔のパスを試みる積極性が見られました。
右はアントニーが時間を作って他の選手がハーフスペースを利用、左は大外に張ったガルナチョのスピードを活かしたテイクオン、と守備の緩い両ワイドから攻略を図るレッド・デビルズ。11分、タッチライン際でボールを受けたガルナチョがペナルティボックス角までボールを運び斜め後ろのロナウドにパス。ロナウドはマーク2枚を引きつけつつパスを選択し、最後は中央にいたアントニーがDFを背負いながら切り返し右足シュートGKの正面。
シェリフは押し込まれると前線1枚を残し5-4,時には6-3ブロックというかなり極端な守備で、ボックス近辺に単純に人数が多くスペースが生まれづらい状況。主導権を握ったユナイテッドは中々ゴールに近い位置からの得点機会を生み出せず、典型的なビッグクラブvsアップセットを狙うチームの展開。
それ故にガルナチョのやり過ぎなくらいのゴール方向への意識が変化を生み出し、そこから生まれる判断の速さ~90分を通したドリブル突破が出場選手中最多である事からも、公式戦初先発ながら彼が重要な役割を担っていた事は明らかでした。
一方で横や後ろのスペース/味方を使うような緩急の"緩"に関してはまだまだ課題も多く、悪い意味で考えすぎなように見える最近のサンチョと混ぜて半分で割ると丁度いい塩梅になるかもしれない。
26分、マルティネスが相手1TOP Atiemwenから上手くボールとの間に身体を入れて奪取したところからカウンター。カゼミロから斜めのパスを貰い一気にスピードを上げたダロトがハーフスペースを持ち上がると、一度外に待つアントニーを経由し最後はペナルティアークからブルーノがコントロールショットも惜しくも枠を外れる。
28分、相手を低い位置に押し込んだ状態でリンデロフ→左ボックス内のスペースを狙ったロブパスがブルーノに通ると、ヘディングで中に折り返した先に待つロナウドにこの試合初の決定機が訪れますが、ゴール前の大チャンスにボールをミートし切れず。
その後もエリクセンのミドルシュート、マラシアのボックス内からの左足でシェリフゴールを脅かすものの得点は生まれず、試合後に議論を生んだプレーが出たのは38分のことでした。距離を詰めてこない対面のディフェンダーを挑発する意図だったのか、アントニーが代名詞のコマ回り連続ターンを披露。
antony did that spin 🥶 pic.twitter.com/7KtfLvSdbP
— ⚡ (@UTDCJ_) October 27, 2022
確かに、特に必要のないプレーであるものの、スピンで足を止めた後にチャンネルを狙ったスルーパスを通しており、一連の流れを考えれば個人的にはそこまで批判対象になるとは思わない。仮にこの後対面DFが削りに来て負傷したとしてもアントニーの自己責任だが、寧ろ積極的にボールにアプローチしてくれるならば彼の狙い通りといった所だろう。
そして44分、左からのCKでエリクセンの斜めに落ちるキックにダロトがニアサイドで合わせて待望の先制点!!
あまり知られていませんがダロトの空中戦スタッツは屈強な選手が集うプレミアリーグ内でも上位であり、今後もセットプレーからの得点を生み出してくれるはず。
オープンプレーであと一歩という流れの中でセットプレーから得点、理想的な二の矢を繰り出したホームチームが1点リードで前半終了。
後半
HT明けのユナイテッドはマルティネスに変えてマグワイア、アントニーに変えてラッシュフォードを投入。これに伴いブルーノが右サイドへ移動し、ラッシュフォードはセカンドストライカーとして真ん中に配置された。
後半も引き続きハーフコートマッチだったのでポジションはあってないようなものだが、特徴としてはブルーノはウイングではなく1つ中に入り、中央からサイドへ移動した事でボールを持った際の時間的猶予が生まれ持ち前のチャンスクリエイト能力がより発揮しやすくなった。更に、余裕が生まれた事で一か八かのプレーも減少。既に何度か試されている起用法であるものの、回数を経てより洗練されていっている印象。
システムとしては4-4-2ベースで、相手陣内で押し込んでいる際は前線に5,6枚を配置しシェリフのブロックに数的同数を確保。両フルバックも高い位置を取るのでマグワイア-リンデロフの2CBでカウンター対応を行う場面が出てくるのは少し心もとないが、特に後者のカバーリングが冴えていたので危険なシーンはほぼ無かった。
また、久々の試合出場となったマグワイアも比較的緩いゲームで復帰できたのでスムーズにチームに溶け込むことが出来、得意の斜め45度ロングフィードを複数回ガルナチョへ通し攻撃の起点に。
ブーイングが行われた事は残念でならない。
59分、シェリフCB Kikiに厳しくプレッシングを行いパスコースを制限すると、受け手にもタイトにチェックを入れて相手のエラーを誘発。高い位置でボール奪取に成功するとエリクセンはすかさず前に待つロナウドへパスを入れ、シュートフェイントで完全にマークを交わしたCR7がボックス内、ゴール正面で決定機を迎えたものの、シュートはX軸Y軸の両方でゴールマウスから外れて痛恨のミスキック。
61分にも左ハーフスペースからラッシュフォードが放ったクロスをブルーノが折り返し再びロナウド、今度はネットを揺らしたがオフサイドでまたしてもゴールを奪う事が出来ず本人もサポーターもフラストレーションの溜まる場面が続いた。
62分、出ずっぱりで疲労蓄積が懸念されるダロトを下げてショー、カゼミロに変えてマクトミネイ投入で2枚のカードを切ったテン・ハフ。フルバックの左右に関してはマラシアが右に回り、ショーはそのままLBに入る。
そして迎えた65分、ガルナチョがタッチライン際で相手RBのファウルを誘いFKを獲得すると、リスタートから20本のパスを繋ぐ長いポゼッションの末、エリクセンの横パスにダイレクトでクロスを放ったショーのボールにラッシュフォードがパワーヘッダー!!
ユナイテッド待望の追加点。
個人的に興味深いと感じたプレーは78分のコーナーキック。
まずはエリクセンがニアでフリーになっているブルーノへ素早くパスを送り、パスを受けたブルーノはハーフターンで身体を自陣ゴール方向に向けながらラストパス。そしてこれを受けたガルナチョが完全にフリーでコントロールショット。シュート自体は枠を上を通り過ぎたものの、完全に相手のCK守備の裏をかいたサインプレーなので今後も有効な手札の1つになるでしょう。
80分を前にユナイテッドはガルナチョに変えて負傷から戻ってきたファン・デ・ベークを投入し最後のカードを消費します。この交代に伴いラッシュフォードが中央→左へ位置を移し、ファン・デ・ベークが攻撃的MFに入り4-2-3-1ベースにシステム変更。
81分、右サイドペナルティボックス手前からブルーノがゴール前に縦回転をかけたボールスピードの速いクロスを蹴ると、ロナウドがタイミングを合わせてヘディングシュート。一度GKがセーブしたものの、こぼれたボールを自身で押し込みチーム3点目、決定機をモノに出来ずにいた本人にとっても安堵のゴールが生まれ勝負が決します。
そして、残り10分少々という時間ながらファン・デ・ベークは(主にショーの)スルーパスを引き出して左ハーフスペースで抜け出し、複数回のチャンスを創出するなど今後への期待を膨らませるプレーを見せた。
タイムアップの笛がなる直前までシェリフに失点の脅威を与え続けた赤い悪魔はスパーズ戦をも上回る今季一番の内容で3-0完勝。
データ
Standard
所謂ハーフコートマッチで、シェリフに1本もシュートを打たせなかった完璧な試合運びでした。アタッキングサードで押し込む展開が長く、時折カウンターを喰らいそうなロストもありましたが、リチャ,リンデロフらがスルーパスに上手く対処して高い位置でボールを奪い返す事が出来た。
総シュート24、ビッグチャンスクリエイト6回と攻撃面でも多くの決定機を創出しましたが、前半のフィニッシュ精度には課題。ただ、ハーフタイム明けの45分はあらゆる面において完璧に近いパフォーマンス。
個人の内容ではキャリー、パスの両面で圧倒的な貢献を記録したエリクセンがMOTM。コーナキックからダロトのゴールをアシストした事は勿論のこと、キーパスも最多6回を記録し、左のハーフスペースを中心に時には逆サイドでフルバックが上がって空いたスペースに顔を出す等まさにチームの潤滑油でした。
Man Utd 3 : 0 FC Sheriff
— markstats bot (@markstatsbot) October 27, 2022
▪ xG: 3.35 - 0.0
▪ xThreat: 3.16 - 0.3
▪ Possession: 74.3% - 25.7%
▪ Field Tilt: 92.1% - 7.9%
▪ Def Line Height: 53.4 - 22.1#msbot_uel #uel pic.twitter.com/MnE0aAKrAs
被シュート0という事は勿論xGAも0.0なのは当然。ユナイテッドのゴール期待値は3.35で実際のゴール数は3、悪い数字ではありませんが、あと2,3点取れるようなチームになると本当の意味ではタイトルが見えてくる。
シェリフは4-5-1と後ろ比重のシステムでしたが全体的にプレスが甘く、更にかなり中央に絞ったブロックを敷いていたのでボール保持はかなりしやすかったでしょう。実際に得点に繋がりやすいアタッキングサードの中央レーンとハーフスペースで100本以上のパスを成立させており、途中出場のファン・デ・ベークが短い時間で何度も味方のスルーパスを引き出していたのもこの下地が故。彼のようにオフ・ザ・ボールの動きが優れた選手はこのような押し込む展開で非常に重宝します。
あとがき
新戦力を発掘しつつ、怪我から戻ってきた選手にも出場機会を与えチームに慣れさせることに成功。戦前の理想通りの90分を終えてこれでヨーロッパリーグ4連勝!!!!
最終節、アノエタで開催予定のレアル・ソシエダ戦に2点差以上をつけて勝利すれば首位奪還、プレーオフを戦わずしてトーナメントに進めるので、来週のミッドウィークまで今の好調を維持したい。
その前に、週末のプレミアリーグは今回に引き続きオールド・トラッフォード開催で復調傾向のウエストハムとのゲームが待っています。アイアンズもミッドウィークに欧州コンペティションを戦っており、シルケボーIFに1-0で勝利。
デイヴィッド・モイーズ率いるチームにとって良いニュースはイングランド上陸前から個人的に注目しているNayaf Aguerdが戦線復帰、チーム最多の88本をパスを成立させ、ロングボール成功率は8/11と早速配球能力の高さを見せつけた事。彼が出てくる場合、ラッシュフォードやロナウドが前線からしっかりとプレッシングをかけて余裕を与えないようにする必要がある。