※22/23 UEFAヨーロッパリーグ
シェリフ・ティラスポリvsマンチェスター・ユナイテッド戦の記事です。
ユナイテッドにとってはインターナショナルブレイク前最後の試合となったモルドバは首都キシナウ ジンブル・スタジアムでのELグループステージ第2戦。質という意味では物足りなさを覚えるものの、0-2の勝利で終えられたという結果は喜ばしい。
🌟 Magnificent in midfield.@ChrisEriksen8 is voted your Man of the Match after tonight's win against Sheriff 👏#MUFC || #UEL pic.twitter.com/TUTgRTFkV6
— Manchester United (@ManUtd) September 15, 2022
【Match Review】
このゲームはロシアのウクライナ侵攻による危険を踏まえ、ウクライナと国境を面しているティラスポリではなく代替地キシナウでの開催となっています。
Starting lineup
前半
4-2-3-1のマン・ユナイテッドに対しマンマークを前提においた4-1-2-3で挑んできたシェリフ。LW:Akanbiの体格を生かすロングボール、RW:Ouattaraはドリブルを中心にそれぞれ赤い悪魔のフルバック裏狙いを徹底。序盤はマンツーマンディフェンスがハマってユナイテッドを低い位置に押しとどめ優位に試合を進めますが、その最初の15分間で得点を入れられなかったのが彼の敗因だったのかもしれない。
17分、ミドルサードで守備ブロックの外から隙を狙うユナイテッド。マクトミネイの楔から連続ワンタッチプレーで陣形を崩すと、一度後ろに戻しエリクセンからペナルティアークに位置取りするサンチョにラインブレイクのパスが通り、最後はキックフェイントで目の前のディフェンダーを交わし左足シュートで先制!!
基本的に両ワイドにボールが渡った後のギアチェンジが遅く、緩急の急が伴わない事の多かった試合ですが、ここに限って言えば左右に揺さぶりつつ長時間のボール保持から意図した崩しが出来たように見える。
一方、その大外でのスピード感欠如の主要因としては、左右のバランスが大きく崩れ中盤のフォローが左一辺倒になってしまった点。本来、ブルーノ,エリクセンと今のチーム2大プレイメイカーは共に左側でのプレーを好むので当然といえば当然なのですが、CFのロナウドも降りては来るがダイレクトでバックパスを返すのが基本プレーで、更に左からサイドチェンジでアントニーと相手フルバックの1on1を作る機会もほぼ皆無だった事なども複合的に絡み合った結果だろうか。
マラシアが積極的にInvertedしていた事を踏まえれば、エリクセンの左ワイドはチーム内の決めごとだったかもしれないが、そうなると尚更ブルーノにはバランサーとしての振る舞いも求められる。
参照:sofascore.com
37分、相手GK:KovalからLBへのフィードが短くなりアントニーがアタッキングサードでボールを得ると、相手DFの目線を寄せつつタイミングを見計らって逆サイドのサンチョにラストパスを送るも、右足インサイドの一撃はカバーに入っていたCB:Radeljićにゴールライン上でクリアされ得点ならず。
その後左サイドからのスローインからパスを繋ぎ、直後の38分にはダロトが一度中央のブルーノへボールを委ねボックス内に空くフルバック裏のスペース目掛けてフリーランニング。この判断がLB:Kpozoのファウルを誘ってユナイテッドは公式戦では今シーズン初となるPKをゲット。
ペナルティスポットに向かうのは不振にあえぐロナウド。点取り屋としての精神的強さは健在だったかプレッシャーのかかる場面で堂々ど真ん中に蹴り込んで追加点!!
相手チームのクオリティを考慮すれば決して納得のいく内容では無かったが、アウェイチームは複数得点かつ無失点で前半を折り返す。
後半
HT明けのユナイテッドはマクトミネイに替えてカゼミロ投入。これはマクソースのパフォーマンスレベルの問題があったからではなく、想定よりもフィットに時間のかかりそうなブラジル代表MFを主力と同時起用する事で選手間のケミストリーに期待したのではないかと思います。
また、前半の問題点として挙げた左右バランスに関してはディフェンシブサード~ミドルサードのポゼッション時の並びを1Pivot→2Pivotへ移行し中継点を作る事で改善を図ったようで、後半のマラシアはバックスよりも中盤のタスクを請け負う時間の方が長かった。この融通性も彼が現時点でルーク・ショーを差し置いて一番手に選ばれている理由の1つか?
48分、アントニーからパスを受けたダロトの低弾道クロスにブルーノがダイレクトで合わせるもシュートはGKが足でブロック。50分にもダロト,アントニー,ブルーノ3人の連携で右サイドを突破するなど先述の変更は良い影響をもたらしていたように思える。
2点ビハインドという状況の割には圧が掛からず、シュートチャンスもほぼ遠目からの期待値の低いものという相手チームの状況も相まって盛り上がりに欠ける試合ではあったが、70分にショー🔁ダロトの選手交代から左利きであるマラシアのRB化という興味深いものを見る事も出来た。
通常通り大外にフルバックを置くとき、パスの軌道やボールタッチの円滑さ等から順足の選手の方が明らかに適しているが、日本で言うCancelo’s-Roleのように1つ内側のレーンに位置取りして"90~180度のターンから次のプレーへの移行"というのが有力な選択肢となる場合、逆足の選手の方がやり易い面もあるのかもしれない。そして、これはハーフターンの多いフレッジを右側で起用したほうが良いのではないか?という過去の推測にもつながっていく。
終盤、ようやくシェリフにもボックス内or近辺での得点チャンスが訪れるが、左サイドからのクロスがゴール前に入った81分の攻撃、カゼミロのファウルで得た87分の近距離FKのいずれも得点に結びつける事は叶わずそのままマンチェスター・ユナイテッドが0-2で完封勝利。
データ
Standard
シュート数ではユナイテッドを上回ったシェリフ。しかしボックス外10本という内訳に思うような試合運びが出来なかった事実が反映されており、昨年CLでレアル・マドリーを破ったアップセットの再現とはなりませんでした。
アウェイチームは628本というパスの総数が示すように試合の大半をコントロールし、疲労度の少ない90分でしたが週末にリーグ戦が無いのでこれがそれほど活きてこないのは不運?か。飛びぬけて良かった/悪かった選手はおらず、強いて言えば先制点の直接関与したエリクセンとサンチョの2人がMOTM候補。
FC Sheriff 0 : 2 Man Utd
— markstats bot (@markstatsbot) September 15, 2022
▪ xG: 0.27 - 1.69
▪ xThreat: 0.61 - 1.66
▪ Possession: 32.5% - 67.5%
▪ Field Tilt: 33.9% - 66.1%
▪ Def Line Height: 41.3 - 47.9#msbot_uel #uel pic.twitter.com/gbnNyYe47s
ゴール期待値は常にユナイテッド優勢で進行。率直にいえば今後の参考になるような試合では無かったかもしれませんが、長距離遠征で順当に勝ち点を手にした点は良し。
あとがき
グループEは2試合を終えて2勝のラ・レアルが首位に立ち、現時点では得失点差でユナイテッドは初戦3得点のシェリフに次ぐ3位ですが、まさかがあると思われたモルドバ遠征で危なげなく勝利した事でトーナメント進出自体は特に問題なさそう。
不安要素はPKで得点を挙げたとはいえオンプレーでの貢献が殆ど無かったロナウド。基本的にボールに触って試合単位での調子を上げていくタイプなので、低い位置に降りてビルドアップに参加したがりますが、背負って受けた後は基本的にバックパス一辺倒なので、個人的な本音を言えば前に留まってプレッシャーをかけ続けて欲しい。