待望のフットボール・ディレクター設置後もクラブ内に抵抗勢力が存在しているのかと疑う程にスピード感に欠け、特に売却に関しては移籍金を獲得できた取引が未だアンドレアス・ペレイラのみ。挙句の果てにはイーロン・マスクのおもちゃにされる等、プレミアリーグ2節終了時点で最下位に沈むピッチ上のみならず、スタジアムの外でも迷走を続けるマンチェスター・ユナイテッド。
CBの補強を訴えながら叶わなかった2018夏のモウリーニョ、相思相愛とされながら熱望したジェイドン・サンチョを結局そのオフでは獲得出来なかった2020夏のオーレ(1年後にようやく実現)、10人の新戦力が必要と現有戦力を一刀両断したラルフ、そしてフレンキー・デ・ヨングをチームの柱にしたかったであろうテン・ハフと暫定指揮のキャリックを除く直近4名の指揮官はいずれも移籍ウィンドウで適切なサポートを受けたとは言えません。金額だけ見れば確かに世界トップクラスの支出を記録していますが、オーナーの援助/理解もあって希望する選手をその時に獲得できるマン・シティのグアルディオラ、リバプールのクロップらとは明らかに内情が異なるのではないでしょうか。
スペシャル・ワンが17/18シーズンにチームをPL2位へ導いた事に関して偉業であると自画自賛したのもあながち間違っていなかった。そう後年になって気づかされるのは何たる皮肉。
【RabiotとGarner】ホールディングMFのパニックバイを避けたい
本題のアドリアン・ラビオについて、彼単体で見れば確かにスコット・マクトミネイとそう変わらぬスタッツで、リーグが変わる事も踏まえれば大きな戦力強化になるとは考えにくいのですが、左利きで体格に優れるという希少性、PSG→ユベントスとその国のチャンピオンチームでプレーし続けたという経験も込みで今のユナイテッドに足りないモノをもたらす選手であったはず。
確かにブルーノ並みあるいはそれ以上とされる年俸を支払うのは給与バランスの更なる悪化を招く恐れが強かったですが、現場の指揮官からすればそれは全く関係のない話。(そういう意味ではバルセロナのシャビ・エルナンデスがしきりに補強を要請するのも私はある種当然の権利だと思っている)
一方、ラビオと並行して進んでいたとみられるジェームズ・ガーナーの売却オペレーションに関してはフランス代表MFの交渉が凍結した事で一旦見直される可能性が高いと考えられます。プレシーズンのラージョ戦でも垣間見えたように彼はチャンピオンシップのタフな環境でタックラーとしての資質を開花。尚且つ昨季はフォレストで8アシスト,90分辺り2.0回のキーパスを記録しているように元はボールプレーに強みを持つ選手でもあり、186cmという高身長も合わせてラビオに期待した役割のうち利き足以外は彼でカバー出来得ることから私は断固として彼の売却にはNo!!を突き付ける。
なお、ラビオ破談のニュースが流れてから直ぐにカゼミロをセカンドターゲットに設定したという類の報道が出回っていますが、30歳という年齢,獲得に必要であろう高額な移籍金やサラリー,プレースタイルといったあらゆる面で適当とは思えない。無理筋だと分かっていてもデ・ヨングを最後まで追っかけつつ、どうしても叶わないというならばせめてボールキャリーや連携プレーといった彼と同じ長所を併せ持った選手をリストアップする必要がある。
負の連鎖、一番上に立つ者たちの責任は?
After Manchester United’s awful start to the season, the focus has once again turned to the Glazers. This thread will look at some of the reasons why the club’s fans might be unhappy with their owners – from a financial perspective #MUFC
— Swiss Ramble (@SwissRamble) August 16, 2022
上記はフットボールとビジネスの関係についてブログやソーシャルメディアに投稿するSwiss Ramble氏(@SwissRamble)がツイートしたマンチェスター・ユナイテッドとグレイザーに関するスレッド。
マルコム・グレイザーが2005年にユナイテッドを買収した際、LBO(レバレッジドバイアウト)という手段を用い自らの懐を痛める事無くクラブを手に入れた事は広く知られ、フットボールファンの批判の対象になってきました。Ramble氏によれば、後を継いだジョエル、アヴラムに代表されるマルコムの子供達からなるグレイザーファミリーは毎年クラブから配当を受け取っており、2016年~2022年の6年間で£166M、年間平均2,200万ポンドという大金が彼らに吸われているとのこと。
#MUFC are the only Premier League club to pay dividends to their shareholders, mainly the Glazers. Since 2016 they have paid a hefty £166m, averaging £22m a year. Note: the high £33m payment in 2021/22 included including £11m delayed from 2020/21. pic.twitter.com/iVdTC0u3F6
— Swiss Ramble (@SwissRamble) August 16, 2022
また、LBO時に借り入れた買収資金の利払いもクラブにとって大きな負担となっており、過去12年間の利払い金は2番目に多いアーセナルの約3倍、プレミアリーグの他のクラブの合計とほぼ同じという圧倒的なもの。ローン自体の返済もリーグで最も高額で、改善を約束したとはいえ設備投資を怠ってきた(オールド・トラッフォードの雨漏りは悪い意味でその象徴)事を踏まえても”良いオーナー”ではないと断言できる。
#MUFC have also had to pay £147m on net loan repayments since 2010, which would have been even higher without £97m new debt since COVID struck. Only #AFC have paid more (to fund the Emirates stadium), exacerbated by replacing £202m external bonds with an owner loan in 2021. pic.twitter.com/NRc9FsF0eb
— Swiss Ramble (@SwissRamble) August 16, 2022
こうしてオーナー一家の実態を改めて思い知らされると、献身性に欠けプレーに見合わない高額年俸を受け取っている選手が多数という今のトップチームの状況とまさに似通った部分が多く、コーチを監督を選手を入れ替えたとしても、今の風土を作り出すこのトップがこのままでいる限り延々と同じことが繰り返されるだけなのかもしれない。