★20/21イングランド・プレミアリーグ第9節
マンチェスター・ユナイテッドvsリバプール戦の記事です。
はじめに
画面の前、或いは現地に赴いて最大のライバルとの試合を楽しみにしていたであろう多くのユナイテッドファン・サポーターの皆さん、強くあれ……
かくいう私も今回の試合に対しては憤りというよりも諦観に近い想いを抱かざるを得ない内容でしたが。。。
プレビュー
今の陣容でリバプールに対し真っ向勝負、2コートマッチで殴り合うのは不利だと予想しある程度ブロックを敷いて4-5-1でカウンターを狙う展開を予想していましたが、実際にはこれまでの数試合同様のラインナップと戦い方で玉砕。
振り返ると、非常に謎の多い試合でした。
試合内容
結果
ご覧の通り、全てが崩れ去った完敗。
今回は少しやり方を変えて、マンチェスター・ユナイテッドの守備に重点をおいて振り返ります。
ユナイテッドの陣形
スタートのフォーメーションは4-2-3-1、試合の中では殆ど4TOPに近い4-2-4で戦った前半のマンチェスター・ユナイテッド。
攻撃時はこのフロント4で相手ゴールに迫ってくれれば何の問題もありません。
しかし、4分にカウンターからブルーノに決定機が訪れたのを除くと、それ以降は組織で崩したチャンスはほとんどありませんでした。
また、ボールを失った後のカウンタープレスはブルーノ以外誰も行う素振りを見せず、特にこちらから見て右のサイド(ワン=ビサカ-グリーンウッド)はワン=ビサカが相手LBのロバートソンにプレスをかけるいびつな形となっており、最初の失点と4失点目はこの戦術的欠陥から生まれたといっても過言ではありません。
アタッカーが年月を経て、徐々に守備意識が低下していくというのは近年のユナイテッドに続く悪い慣習になっていますが、マルシャルやラッシュフォードに続き今季はメイソン・グリーンウッドにもその兆候が出始めているようにみえます。
📝守備スタッツ[2021-10-25時点(Mason Greenwood Scouting Report | FBref.comより)〕
タックル/90
0.94→0.74
プレス/90
12.99→9.26
特にプレスに対する意識は90分辺りで3回以上少なくなるほど低下しているようで、クリスティアーノ・ロナウドとうまく関係性が築けていないという一部報道もありましたが、利己的なプレーが攻撃だけではなく守備にも出ているのかもしれない。
ユナイテッドの歴史でいえば、ルート・ファン・ニステルローイとクリスティアーノ間に浮上した不仲説を思い起こさせる内容で、この状態が続くのであればアタッカーとしてこの2人のどちらかを選び、もう片方をチームから外すという決断が必要になってしまう恐れも……
因みに、チーム全体のスタッツも
タックル/90
15.5→13.0
プレス/90
132.7→115.0
とプレッシングの数値を大きく落としています。
当初、こちらに関してはカウンター主体からポゼッション志向へスタイル転換を図ったからという理由を考えましたが、平均ボール支配率は55.8→57.2とその成果は現状あまり見られません。単純に昨季よりもチームとして守備が機能していないと結論付けざるを得ない内容です。
後から今回の振り返ると、ストライカーのロナウド(1枚は前線に残している方が結果的に相手CBへの牽制になる場合が多い)を除くフィールドプレイヤーが素早いネガティブトランジションでボールを失った後に自陣へ戻ればここまでの守備崩壊にはなっておらず、リバプールも球際への寄せが甘く、やはりラッシュフォードvsアレクサンダー=アーノルドのマッチアップが出来るとこちら側に主導権があるのでまともな試合になっていたのではないでしょうか。
選手に献身性・自己犠牲を植え付けるのは誰の仕事?
もはや言い飽きているくらいに同じ発言を繰り返していますが、今のユナイテッドには怠惰という言葉が一番相応しいでしょう。
前線の選手は上述のように守備意識と運動量がまるで足らず、中盤(DM)は横のスライドやビルドアップ時の細かい位置修正がどの試合でも課題として露呈。バックスは首を振って周囲の状況を確認するという作業を怠りがちで、誰がというよりは皆が出来る筈のことをやっていないという印象を強く受けます。
戦術的問題と一言で片づけ、チームに約束事を根付かせられないオーレ以下コーチングスタッフに全責任を投げつける風潮が優勢なようですが、本当にこれはコーチ陣だけが悪いのでしょうか?
私には選手側のメンタリティにも問題があるように思えてなりません。
例えば、今からクリスティアーノ・ロナウドに在りし日のウェイン・ルーニーのような馬車馬の動きを要求しても実行する事は出来ないと思われ、選手の個性はアカデミーのうちに大半が形成されるものだと私は考えています。
育成年代の話であるならば正しく教えを説いてあげられなかったとしてコーチに大きな責任が問われるでしょうが、彼らは報酬を受け取ってフットボールを行うプロフェッショナル。
指揮官・コーチが方向性を示したところで最後にそれを実行するのは選手。
「守備に奔走しろ!」と言われただけで走れるならばメスト・エジルは今も欧州トップ戦線だったでしょうし、アントニー・マルシャルもカリム・ベンゼマのようなオールラウンダーに成長していたはず。
ある程度そういった約束事が染みついているという前提で彼らに多額のサラリーが支払われていると私は思っていたので、その前提が崩れるとなると一から価値観を見直す必要があるのかもしれない。
私は厳しい生存競争を勝ち抜いている彼ら全員をみな等しく尊敬していますが、それが強大過ぎたが故に要求するハードルも知らない内に高くなっていたのだろうか。
また1つフットボールの大沼に嵌ってしまった
(逐次更新予定)
CR7を意識したチームスタイルの再構成
"ユナイテッドの陣形"で少し触れたように、昨季の戦い方はエディンソン・カバーニのエンジンありきで形成されたものでした。
ラッシュフォードが守備タスクをあまり負わず攻撃に専念出来たのも、エル・マタドールが試合の大半で中盤のように振る舞うことで不足分をカバーしていた事が大きいと考えられます。
しかし、頼りのカバーニは稼働率という面で代表戦や負傷などによって起用出来ない試合もそれなりに多く、更に今季はクリスティアーノが1TOPのファーストチョイスなので今までの戦い方では明らかに守備の人員が不足してしまいます。
ご存じのようにロナウドの守備貢献は非常に小さく、恐らくヨーロッパのFWで最少レベル。 その弱点考慮してもなお特筆すべきゴール奪取力で総合収支をプラスにするのがCR7という選手で、実際にビジャレアル戦やアタランタ戦など勝ち越し点の欲しい状況で何度も彼に救われています。そんな彼を使わないというのは様々な面からみて現実的な選択肢とは言えません。
高頻度で前線のカウンタープレスがかからず、かといってリトリートするわけでもなく4-2-4になってしまうような今のラインナップでは今後も不安定な戦いが続くと思われるので、ここは思い切ってサイドをウイング→ハーフに位置を落とし、チーム全体の重心を少し下げた形を取り入れるべきかもしれない。
例:★4-5-1(4-4-1-1)
- カウンタープレスからリトリートへ
- 全体的に長い距離のランが増えるのでスタミナがより要求されるだろう。
- サイドハーフには守備貢献、時には最終ラインまで戻る献身性が求められる
- 核であるブルーノはセカンドストライカーに戻して昨季基準の得点関与を期待
(空白部分は誰が一番フィットするか正直読めないというのとコンディション不良からか調子を著しく崩している選手の扱いに悩んだ結果。)
ロナウドは前残りする際に相手のフルバックのうち攻撃性能の高い方をくぎ付けにする為にサイドに張っているのが良いかもしれない。
そして、守備はこれまでの4-4-2でのカウンタープレスではなく、(前線からカウントして)5-4ブロックで相手を塞き止めて得意の高速カウンターからゴールを奪うという形が合っていると思う。
恐らく、ラッシュフォードかグリーンウッドのいずれか片方はスターティングラインナップから外れる試合が増えそうですが、後者に関しては今のプレースタイルを続けるならばセンターFWでロナウドと真っ向勝負でポジション争いに挑むのも1つの道。
また、ジェシー・リンガードやドニー・ファン・デ・ベークといった出場機会に恵まれない選手にとっては大きなチャンス。 ロナウドとの相性もいいリンガードは左サイド、VDBも復帰以降動きの悪いマクトミネイからポジションを奪う事を期待。
今のチームで所謂スター側にカテゴライズされるアタッカーはロナウド、ブルーノ、ラッシュフォード、サンチョ、カバーニ、グリーンウッド、マルシャルの7名。
(分類が難しいポグバを含むと8名)
どう頑張ってもこの全員を同時起用することは無理なので、現実的にはここから試合毎に3~4人を選ぶことになるでしょう。 ブルーノは別格として、この中でチャンメイクの能力が高いのはサンチョとマルシャル(+ポグバ)。
前者は守備に関してもプレス/90:14.5、当初の想像よりも献身的で、彼を使わない手はまずないでしょう。 そして本当にもどかしいのが後者。トランジションを早く・継続的に出来るようになってくれればライバルを全員抜いて不動のレギュラーになれるポテンシャルはあると今でも思っていますが、26歳のシーズンで急激にそれが改善された例を私はあまり知りません……