噂のうの字も無いところから突如として舞い込んできたビッグディール。
18/19~20/21までの3シーズンでプレミアリーグ91試合41ゴール9アシストの記録を残し、サウサンプトン不動のストライカーとしてリバプール時代の不振を払拭したリーグ屈指の点取り屋、ダニー・イングスのアストン・ヴィラへの3年契約の完全移籍が発表されました。
イングスはここ数年オフの移籍の噂が絶えない人気選手でしたが、噂されていたマンチェスター・ユナイテッドやトッテナムではなく新天地はミッドランドの雄。ヴィランズは既に今夏の補強としてエミ・ブエンディア、アシュリー・ヤング、レオン・ベイリーの獲得を決めていますが、ここに来て更に前線に強力な新戦力を加えました。
一方でジャック・グリーリッシュのマン・シティへの移籍はほぼ決まりかけているような状況なので、貴重なワンクラブマンを失うサポーターの心情は複雑なものだと思われますが、そういった背景を考えず純粋に戦力だけを見れば昨季から大幅な上積みに成功しています。
ヴィラのFWは昨季ブレントフォードから加入し、リバプール戦のハットトリック等センセーショナルな活躍でプレミアデビューシーズンながら14ゴールを挙げたオリー・ワトキンスが不動の地位を築いている状況。
1トップの場合は熾烈なポジション争いに身を投じる事になりますが、もしかするとディーン・スミス監督はセインツ時代イングスが慣れ親しんだフラット4-4-2の採用を来季の戦術オプションとして考えているのかもしれません。
この仮定を補強する要素としてはオリー・ワトキンスのプレーエリア。
4-2-3-1の1トップとして出場することの多かった彼ですが中央でどっしり構えるというよりは流れの中で左サイドに流れるのが癖、或いはチーム内の約束事?だったので20/21シーズンのヒートマップを見ても赤色はピッチ左サイドに大きく偏っています。
参照:https://www.sofascore.com/player/ollie-watkins/555386
ワトキンスとイングスがユニットを組むと仮定すると、オールラウンダーの前者がサイドアタッカーやCMとコンビネーションでチャンスを創出し、フィニッシャーとして後者が決めきる形が無難でしょうか。
イングスは空中戦やチャンスメイクをやや苦手としており、傾向としては得点奪取に特化したプレイヤーなのでジャック・グリーリッシュの代替やプレイメイカーとしての働きを要求するのは相応しくありません。
ここまでは4-4-2ベースで考えてきましたが、先述したワトキンスを特徴を踏まえてこれまでの4-2-3-1のままLWに彼をスライドさせる事も十分考えられます。
LWとしてのグリーリッシュはそれほど守備貢献が高くなく、左サイドの守備はLBのマット・ターゲットありきで回っていました。
ルーク・ショーがようやく世界レベルで正しく評価された今、プレミアリーグで最も過小評価されているLBだと私は思っています。
それにしてもセインツはLBという人材難のポジションで安定してアカデミー上がりのトップ選手を輩出していますが何か育成のメソッドでもあるのでしょうか?
一方ワトキンスはプレッシングを厭わないFWなので守備面だけでいえばこのスライドにさして支障は無いと考えられます。
もっとも、クリエイターとしてのグリーリッシュは世界中を探しても代わりを見つける事は不可能に近い水準なので攻撃面に関しては小さくない穴が開くのは確か。
あとがき
①イングス獲得はグリーリッシュの代替というよりもFWの層を厚くするという意図が強く、来季はオプションとして4-4-2採用も考えられる。
②現代的FWのワトキンスとフィニッシャーのイングスではお互いに強みが異なるので、ユニットを組ませるだけでなく想定される試合展開によっての使い分け可。
③左に流れる傾向の強いワトキンスのLW起用も考えられるがやはり生え抜きでクラブの象徴だったグリーリッシュを失うのは大きな痛手
そういえば、グリーリッシュに続きハリー・ケインも練習参加拒否との報道が伝えられるなど急速に移籍話が進みそうな気配がありますが、実際には£100Mを前者に支払った後にそれを上回る金額を投入するのはいくらあのクラブでも厳しいのでは。
そんな風にでも思わないとやっていられないというのが本音……