*本記事はEuropean Super League騒動、そしてそれに伴うエド・ウッドワードの年内退任、背後に見え隠れするグレイザーファミリーの思惑やウッドワードの後任候補についての記事です。
マンチェスター・ユナイテッドの会長ジョエル・グレイザーからサポーターに向けた謝罪メッセージが先日クラブ公式HPにて発表されました。
全文
マンチェスター・ユナイテッドのサポーターの皆様へ。
この数日間、私たちは、フットボールが生み出す素晴らしい情熱と、ファンの皆さんのこの偉大なクラブに対する深い忠誠心を目の当たりにしました。 皆さんは、欧州スーパーリーグに反対する意思を明確にし、私たちはそれに耳を傾けました。私たちは間違った方向に進んでしまいましたが、それを修正することができることを示したいと思っています。 傷が癒えるまでにはまだ時間がかかると思いますが、私個人としても、ファンの皆さんとの信頼関係を再構築し、皆さんが信念を持って発信してくださったメッセージから学ぶことを約束します。 私たちは、欧州のフットボール界が、ピラミッド型の組織全体で長期的により持続可能なものになる必要があると考えています。しかしスーパーリーグがそのための正しい手段でなかったことを、私たちは十分に受け入れています。 より安定した基盤を作ろうとするあまり、昇格、降格、ピラミッド型の構造、といった欧州のフットボール界に深く根付いた伝統に十分な敬意を払わなかったことを、私たちは反省しています。 ここは世界で最も偉大なサッカークラブです。そしてこの数日の間、皆さんに不当な不安を与えてしまったことを心よりお詫び申し上げます。 この問題を解決することは、私たちにとって重要です。 マンチェスター・ユナイテッドには豊かな伝統があり、私たちには、その偉大な伝統と価値にふさわしい存在となる責任があることを認識しています。 新型コロナウィルスの感染拡大は、非常に多くの、これまでになかった課題を投げかけてきましたが、マンチェスター・ユナイテッドと、マンチェスターをはじめとする世界中のファンの皆さんが、大きなプレッシャーに見事に対応してきたことを誇りに思っています。 私たちはまた、皆さんとのコミュニケーションを深める必要があることにもあらためて気づきました。なぜなら皆さんこそが常にクラブの中心であるからです。 フットボール界が直面している長期的な課題を協力して解決していくために、他の関係者たちとの関係を再構築すべく必要な取り組みを行なっています。 今、私たちが最優先すべきことは、クラブの全チームが可能な限り最高の状態でシーズンを終えられるよう、引き続きサポートしていくことです。 最後になりましたが、皆さんのご支援がこのクラブを素晴らしいものにしていることをあらためて実感し、深く感謝しております。 敬意をこめて。
ジョエル・グレイザー
-マンチェスター・ユナイテッド公式より-
とのことですが、「皆さんとのコミュニケーションを深める必要があることにもあらためて気づきました。」……改めてとは?
クラブを買収した2005年以来サポーターの前にも姿を現さず、そもそもスタジアムにすら殆ど足を運んでいないような人間が何を今更清廉ぶっているのか。
率直に言えばマネーマネーマネーが貴方たちのユナイテッドに対する全てではないかとサポーターは感じていることでしょう。
そしてピラミッド型の欧州フットボールの構造全体がより長期持続可能なものにする為とESLに対して尤もらしく言い訳を述べていますが、もしあれが実現したところで恩恵を受けるのは一部メガクラブ、いわば貴族階級のみで大多数は寧ろ出涸らしになる事が目に見えていました。
この主張は所謂トリクルダウン理論に基づくものだと思われますが、世界のどこを見渡してもその戯言が実現したケースは存在していません。
実際には貧富の差が広がれば経済成長は抑制されますし富める者は富める者だけの社交界で全てのサイクルを回し下には水一滴たりとも落とす気はないというのが火を見るよりも明らかです。
後任最有力のリチャード・アーノルド、やはりグレイザーファミリーの息がかかる人物か?
そして、多くのファンを喜ばせたあのニュースに関して。
グレイザーファミリーを中心とするマンチェスター・ユナイテッド首脳陣はEuropean Super League騒動の黒幕の1人とされており、一連の騒動に対する責任を取るような形でエド・ウッドワードの年内退任が既に発表されていますが、Skysportsからはウッドワードが実はESL反対側でグレイザーファミリーの提案したこの計画を支持できなかった事が辞任の理由であるという記事も出ており、困惑しているサポーターも非常に多いですがやはりウッドワードの退任はトカゲのしっぽ切りに過ぎなかったというのが実情のようです。
そんなウッドワードの後任には彼と同い年でユナイテッドでは現在グループマネージングディレクターを務めるリチャード・アーノルドが就くと見られ、他には元ユナイテッドの守護神で現在はアヤックスCEOを務めるエドウィン・ファン・デル・サール、見た目がグレイザーファミリーによく似ている事から彼らとよく間違われるクリフ・バティ(ユナイテッドのチーフ・ファイナンシャル・オフィサー)らの名前が挙げられています。
(Three candidates to replace Ed Woodward at Manchester United - Richard Fay - Manchester Evening News)
サポーターの間で最も人気が高いのは今夏のドニー・ファン・デ・ベークの獲得交渉にも助力したと伝えられているファン・デル・サールですが、過去3名のユナイテッドの取締役はいずれもグループ内で働いている人物が任命されている(ピーター・ケニオン、デイヴィッド・ギル、エド・ウッドワード)ので恐らくは最初に挙げたアーノルドの就任が濃厚。
The AthleticによればアーノルドはEuropean Super League構想についてレアル・マドリー会長フロレンティーノ・ペレスがその存在を公にする前から知っていたとされ、ウッドワードと最近クラブのFDに就任したジョン・マートフにZoom会議でESL計画の"ポジティブさ"について説明されたようです。
これらの情報を踏まえると、グレイザーファミリーはエド・ウッドワードがESLに反対の意思を見せ、自分たちにとって都合の良い駒では無くなったので新たな傀儡、そして批判を交わす為のスケープゴートとしてリチャード・アーノルドという人物を利用するつもりであるというのが最も考えられそうなシナリオ。
そしてアーノルド自身もクラブ内での立場、社会的地位を高める事が出来るのでそれと知りながら彼らの操り人形として振る舞うのでしょうね……
反グレイザーの動きが過熱する
また、#GlazersOutの名のもとにこれまでもマンチェスター・ユナイテッドのサポーターはTwitter上などでグレイザーファミリーに対して強い拒絶反応、そして彼らの排斥を目指して行動を取ってきましたが今回は怒りのボルテージがそれまでとは比べ物にならない程に溜まっており、現地時間木曜朝にはキャリントンにあるユナイテッドの練習場入り口に数多くのファンが集まり横断幕を掲げてグレイザーに抗議の意思を見せました。
不法侵入を犯し選手に危険性があるこの手法は決して褒められたやり方ではありませんが、何もしなければこのままクラブの歴史・伝統・哲学全てをグレイザーに破壊されてしまうという強い危機感を覚えた故の行動だとという事は分かるので、私自身もこのクラブの1人のファンとして何か出来る事を探していきたいですね。
因みに、この#GlazersOutのハッシュタグはイギリス国内でトレンド1位を取得し世界中の数多くの国でトレンド入りを果たすなどこの動きは6億5900万人いるとされるマンチェスター・ユナイテッドのファン(2011年の調査をもとにしたクラブ側の発表。)の間で一大ムーブメントになっています。
(参照:https://getdaytrends.com/ja/united-kingdom/trend/%23GlazersOut/)
更にこの流れは現在も進行中で、現地時間4月24日(土)午後3時にオールド・トラッフォードにサポーターが集まってESLとグレイザーファミリーへの抗議をしようという呼びかけが現地サポーターを中心に拡大中。
彼らの掲げる50+1というバナーはドイツのフットボール界に存在するクラブの議決権に関するルールの話で、ドイツでは一部の例外を除いてクラブ以外の個人・団体が保有できる議決権は49%までに制限されています。
今回の騒動で最も評価を上げたブンデスリーガの経営体制や運営ルール、今後のフットボール界にとっての光は彼らの中に隠されているのかもしれません。