いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

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football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

ヨーロッパスーパーリーグ構想について。 Pay to Win化は更に加速する

日本時間4月18日夜、フットボール界を激震させるビッグニュースが突如レアル・マドリー会長フロレンティーノ・ペレスより発表されました。

www.marca.com

 

何十年も前から都市伝説のように水面下で噂されていたビッグクラブを1つに集めたスーパーリーグ構想。

噂が現実のものに成ろうとしている今まさにこの瞬間、我々フットボールファンもこのニュースに対して知り、意見を述べる必要性に駆られているように感じているので今回は新リーグ構想の中身、そして背景をまとめてみました。

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まずは今回大騒ぎになっている"The Super League"について概要を説明します。

 

首脳陣

 

チェアマン:フロレンティーノ・ペレス(レアル・マドリー会長)

副チェアマン:アンドレア・アニェッリ(ユベントス会長)

                      :ジョエル・グレイザー(マンチェスター・ユナイテッド共同オーナー)

                      :ジョン・W・ヘンリー(リバプールオーナー)

                      :スタン・クロエンケ(アーセナルオーナー)

 

参加表明クラブ

 

イングランド

リバプール

マンチェスター・ユナイテッド

アーセナル

マンチェスター・シティ

チェルシー

トッテナム

 

▼スペイン

レアル・マドリー

バルセロナ

アトレティコ・マドリー

 

▼イタリア

ユベントス

ACミラン

インテル

 

 

現在発表されているのはこの12チームですが、後から3チーム追加されて15クラブが固定枠になるそうです。

報道によれば有力なのはバイエルンRBライプツィヒFCポルトの3チーム

 

ちなみに大会のロゴも既に商標出願されているようで、今までの根も葉もない?ウワサとは本気度が違う事も明らかになっています。

 

 

大会ルール

 

20 participating clubs with 15 Founding Clubs and a qualifying mechanism for a further five teams to qualify annually based on achievements in the prior season. Midweek fixtures with all participating clubs continuing to compete in their respective national leagues, preserving the traditional domestic match calendar which remains at the heart of the club game. An August start with clubs participating in two groups of ten, playing home and away fixtures, with the top three in each group automatically qualifying for the quarter finals. Teams finishing fourth and fifth will then compete in a two-legged play-off for the remaining quarter-final positions. A two-leg knockout format will be used to reach the final at the end of May, which will be staged as a single fixture at a neutral venue. As soon as practicable after the start of the men’s competition, a corresponding women’s league will also be launched, helping to advance and develop the women’s game. 

 

参加クラブは20(うち15枠は創設クラブ。さらに前シーズンの成績に応じて毎年5チームが参加できる予選制度を設けます)。

ミッドウィークの試合は、すべての参加クラブがそれぞれの国内リーグで戦い続け、クラブゲームの中心である伝統的な国内での日程を維持します。

8月にスタートし、10クラブずつの2グループに分かれてホーム&アウェイで試合を行い、各グループの上位3チームが自動的に準々決勝への出場権を獲得します。

各グループの上位3チームが自動的に準々決勝に進出し、4位と5位のチームが準々決勝の残りの順位をかけて2回のプレーオフを行います。5月末に行われる決勝戦は、中立地での1試合として行われます。

また、男子大会の開催後、出来る限り早く女子リーグを立ち上げ、女子サッカーの発展にも貢献していきます。  

 

出典:www.arsenal.com

 

という事なのですが、9試合×2で最低でも18試合は予定されているので原文にある" the traditional domestic match calender"というのはリーグ戦のみで国内カップ戦からは離脱するつもりなのかもしれません。

 

また、女子リーグの立ち上げも目標として掲げており、長年女子フットボールの普及にかんして努力を怠ってきた(実際にどうかは知りませんが、少なくとも傍から見るとそう思わざるを得ない)旧体制側への意趣返しのような一文も含まれています。

 

 

 

設立理由(SuperLeague側の主張)

 

The formation of the Super League comes at a time when the global pandemic has accelerated the instability in the existing European football economic model. Further, for a number of years, the Founding Clubs have had the objective of improving the quality and intensity of existing European competitions throughout each season, and of creating a format for top clubs and players to compete on a regular basis. The pandemic has shown that a strategic vision and a sustainable commercial approach are required to enhance value and support for the benefit of the entire European football pyramid. In recent months extensive dialogue has taken place with football stakeholders regarding the future format of European competitions. The Founding Clubs believe the solutions proposed following these talks do not solve fundamental issues, including the need to provide higher- quality matches and additional financial resources for the overall football pyramid. 

 

スーパーリーグの設立は、世界的なパンデミックにより、既存の欧州サッカーの経済モデルの不安定さが加速している時期に行われます。さらに、創設クラブは数年前から、既存の欧州コンペティションの質と強度を各シーズンを通じて向上させ、トップクラブと選手が定期的に競い合える形式を作ることを目的としてきました。 今回のパンデミックにより、欧州サッカーのピラミッド全体に利益をもたらす価値とサポートを高めるためには、戦略的ビジョンと持続可能な商業的アプローチが必要であることがわかりました。 ここ数ヶ月、欧州の大会の将来的なフォーマットに関して、サッカー関係者との間で幅広い対話が行われてきました。これらの話し合いで提案された解決策は、より質の高い試合を提供し、サッカーのピラミッド全体のために追加の財源を提供する必要性など、根本的な問題を解決するものではないと創設クラブは考えています。

 

出典:www.arsenal.com 

 

 分かりやすくするとおそらくこんな感じ。

  1. 新型コロナウイルス(Covid-19)の大流行により経済的大打撃を食らったフットボール界(というか創設クラブ自身の事ですね)の新たな資金源が欲しい
  2. ヨーロッパのコンペティション(UCL、UELなど)の運用方式、収益分配等に関して創設クラブは不満を持っているのでそれならば自分たちで新たなリーグを作ってしまおう

 

▼まずは1から。

SuperLeague構想の手掛かりになるかもしれないヒントは各クラブの損失。

19‐20シーズンはおおよそのリーグで3月初旬から中旬に一度打ち切られ、再開後は無観客での開催となっていました。

通常のリーグ戦は8月~5月までなのでダメージがあったのはその内の3か月程度。

 

それを踏まえてSwiss Ramble氏(@SwissRamble)のTweetを見ていくと……

 

 

一番ダメージの少ないマンチェスター・ユナイテッドで1300万ポンド、ワーストのACミランに至っては1億7千700万ポンドもの損失を計上し、収益がオフィシャルで発表されていないリバプールを除く創設11クラブは合計12億ポンドを失っています。

 

また、アーセナル公式HPに記載されたヨーロッパ・スーパーリーグに関するアナウンスを詳しく見ていくとこの新たな枠組みに参加するクラブはインフラ整備、COVIDのパンデミックによる損失を補填する事のみに使用可能な資金という縛りはありますが35億ユーロもの大金(クラブ毎なのか全体でなのかは不明)を一括で受け取る事が出来る仕組みになっているそうなので、これが実現すればパンデミックの後遺症に苦しむその他大勢のクラブを尻目に彼らビッグクラブは金銭的に多額の援助を受け、彼らの発表によればスーパーリーグはミッドウィーク開催予定なのでリーグ戦にはこれまで通り参加する想定らしいのですがどう考えても格差は拡大する一方。

 

彼の思惑通りに事が進めば"ミラクルレスター"は本当に最早再現不可能の伝説になると思います。

確かに金銭的ダメージの大きさは理解出来ますしそれを補おうと試行錯誤する事自体は批判しませんが、フットボール界のピラミッド全体を財政支援しますと耳障りのいい言葉を並べても根底にあるのは自分たちの収益、存続でしかないと感じざるを得ないのでファンやフットボール関係者から猛反発を受けたのはある種当然ですね。

 

 

▼次に2について

 UEFAはクラブの欧州コンペティション、そして代表戦を年々拡充する方向性を打ち出しており、近年では2018年より代表戦の新たな枠組みUEFAネーションズリーグ、そして来季21‐22シーズンからはUCL、UELに続く新たな大会ヨーロッパ・カンファレンスリーグも創設されます。

更に24‐25シーズンからはチャンピオンズリーグもチーム数が現行32→36へ増加し、優勝するために必要な試合数は13→17へ大幅に増加。

 

また、今回の創設クラブは以前より欧州コンペティションの賞金分配システムに不満を呈しており、大会の歴史・ブランドに多大なる貢献をしてきたビッグクラブにより多くの割合が当てられるべきだと主張していたのでそちらに関しての不満も今回のクーデターに繋がっていると考えられます。

 

現在でも毎週のようにミッドウィークに試合が予定され、選手の負傷との関連が叫ばれている中で自らの収益しか頭に無いUEFAという構図は兼ねてより問題となっていましたが「FIFAUEFAの新しい発明について、私たち選手は操り人形に過ぎない」と直球の不満を漏らしたレアル・マドリー所属のトニ・クロースに代表されるように選手サイドはプレイヤー、ファンを置き去りにして抗争を続ける組織のトップ達には"もううんざり"というのが率直な想いかもしれません。

 

 

 

フットボールはCultureからGameに変化

 

元はと言えばこの流れを加速させたのはイングランド・プレミアリーグ設立にあるようにも思えるのでこの未来を予測していながら目先の利益や栄光に囚われて反対意見を強く主張してこなかったファンにも責任の一端は存在しているのかもしれません。

 

年を追うごとにフットボールの放映権料は増加し、クラブの強さを決めるのはお金という状況が色濃くなっていたのは事実であり、実際にチャンピオンズリーグの優勝チームを見ていくと1981‐2000は15チーム、2001‐2020は9チームと顔ぶれの固定化がより進んでいます。

 

オイルマネーと揶揄されるチェルシー、マン・シティ、パリSGはこれを証明するかのように大量の資金を投じてある種強引にビッグクラブの仲間入りを果たしています。

 

Embed from Getty Images  

ペップ・グアルディオラユルゲン・クロップらの戦術革命というのは実際には全体の一部にしか過ぎず、結局はクオリティの高い選手を高額で集めてきてそれが強さに反映されているケースが殆ど。(それ故に2010年代前半のドルトムント、15‐16レスターなどは神格化されている訳ですが)

 

フットボール界全体の変化を見るとこの欧州スーパーリーグに対して100%No!!と言い切れないのが悲しい。

 

 

一連の報道に関して私が率直に抱いたのは賛成でも反対でもなく、ただひたすらに

"萎えた"につきます。

 

 

私にとってのフットボールは現実とは距離を置いたある種の理想郷であり神聖な文化だったのですが急に汚い現実に引き戻されてしまった気分。

賢者モードに入った今このニュースについて分析すると、仮に今回は計画を阻止出来たとしてもいずれスーパーリーグ設立の方にフットボールが傾いていく事は避けられないだろうなと思います。