はじめに
今年1月29日、出場機会の確保と今夏開催予定のEURO2020のイングランド代表メンバー入りをかけてマンチェスター・ユナイテッドから同じプレミアリーグのウエストハム・ユナイテッドへローン移籍を決断したジェシー・リンガード。
JLingz is a Hammer 🤘 #WelcomeJesse pic.twitter.com/NXEk9xirbz
— West Ham United (@WestHam) January 29, 2021
ウエストハムの指揮官はデイビッド・モイーズでリンガードがまだユースでプレーしていた頃のマンチェスター・ユナイテッドトップチームのボスでもありました。
そんなモイーズ自身の熱烈なアプローチ、そしてスリーライオンズ(イングランド代表の愛称)のチームメイトであるデクラン・ライスの説得により移籍を決断した彼は大方の予想を覆す素晴らしい活躍を続けています。
今回はそんなリンガードについて振り返り、ここまで成績を残している要因には一体どんなものがあるのかを見ていきたいと思います。
スタッツを見る
ハマーズ(ウエストハムの愛称)にはパブロ・フォルナルス、ジャロード・ボーウェン、マヌエル・ランシーニ、サイード・ベンラーマ、そして負傷離脱中のアンドリー・ヤルモレンコなどリンガードの主戦場であるトップ下とサイドアタッカーが粒ぞろいなので移籍当初はまさかここまでの大活躍を見せるとは正直思ってもみなかったです。
しかしながら新天地デビュー戦、そしてユナイテッドでは中々出場機会を得られていなかったので自身のプレミアリーグ今シーズン初出場となったアストンヴィラ戦で2ゴールを奪い鮮烈なデビューを果たすとその後も勢いは留まるところを知らず約2ヶ月で積み上げた数字はリーグ戦9試合8ゴール3アシスト。
早くもゴール数は2017‐2018シーズンのキャリアハイに並び彼がハマーズに加入た1月29日以降の数字を見るとプレミアリーグで最もゴール&アシストの合計数を稼ぎ出す無双状態。
(参照:EPL xG Table and Scorers for the 2020/2021 season | Understat.com)
因みに8ゴールという数字はリバプールのサディオ・マネやチェルシーのティモ・ヴェルナーなど前評判の高かったビッグクラブのアタッカーを超える数字で、4月の成績は2試合を終えた段階で3ゴール1アシストと今度こそ月間MVPに輝きそうなペース。(2月はマン・シティのイルカイ・ギュンドアンが1月に続き連続受賞、3月は3試合5ゴールのケレチ・イヘアナチョがおそらく最有力)
キャリア全体で見ても2017年11月28日のワトフォード戦~2018年1月1日のエバートン戦までの1ヶ月強で7ゴール2アシストを奪った時を超えるハイペースでスコアを伸ばしており、当時のリンガードに対して確変状態で本来の実力以上のモノが出ていると評した多くの人間にそれは誤った判断であると認識させるようなプレーぶり。
また、過去4シーズンのリンガードのヒートマップを見ていくと今シーズンの彼はピッチ上の広い範囲をカバーしていたそれまでのスタイルではなく、左サイド寄りでプレーする機会が増えている事が分かります。
(Jesse Lingard West Ham United videos, transfer history and stats - SofaScoreより)
更に例年よりもペナルティボックスへの侵入頻度が高く、過去2シーズンは殆ど見られなかったゴール近辺でのプレーも特にエリア内左側で増加。
逆にプレッシャーの激しいピッチ中央部へはあまり進出していないというのも過去のリンガードと異なる点ですね。
フィジカルコンタクトの強い選手ではないので比較的ボールを保持しやすいサイドに重点を置いたのは正解でしょう。
ウエストハムでの起用法はここまでの9試合全てでトップ下ですが、実質的には左のサイドアタッカーのように振る舞っているようです。
肝心の得点量産の鍵はオンターゲット率の改善と見られ、
- 17‐18:42.1%
- 18‐19:38.7%
- 19‐20:27.3%
- 20‐21:64.0%👑
今シーズンの数字は64.0%、これはほぼほぼ3本中2本は枠内シュートという驚異的なスタッツで、2位につけるアーセナルのアレクサンドル・ラカゼットを3%上回るリーグトップのスコアです。(参考:Premier League Shooting Stats | FBref.com)
精神的要素、そして来シーズンは何処にいるのか
ロイ・キーン、ギャリー・ネビルといったマンチェスター・ユナイテッドのOB達は一様にリンガードのプロフェッショナリズムを賞賛しています。
ユナイテッドではカップ戦3試合の出場に留まり、3か月以上も実戦から遠ざかっていた期間すらある状態からあっという間に新チームにフィット出来たのは確かに彼のプロ意識が成せる偉業。
母親の看病やまだ幼い兄弟の面倒を見ながらプロフットボーラーとしても試合に向けて準備しなければいけないという状況にあった事が過去2シーズンの不調に繋がっていたと今シーズン開始前に自身のInstagramに投稿していましたが、もしかすると彼を取り巻く環境も過去2年よりは良くなったのかもしれません。
一方でチームにはブルーノ・フェルナンデス、そしてリンガードの大爆発の理由かもしれない左サイドにもマーカス・ラッシュフォードが絶対的レギュラーとして毎試合のようにスタメン出場しているのでこれだけ大活躍したリンガードでさえもクラブに戻ればまたスタメン争いからスタートになると思われます。
It gives me, I think they call it 'endorphins'. pic.twitter.com/xbAkRCinjP
— West Ham United (@WestHam) April 6, 2021
4月6日ウルブス戦でのターンはまるでディミタール・ベルバトフを彷彿とさせるような華麗な技でしたが、そのベルバのように彼もユナイテッドに留まるより自身がレギュラーとしてプレー出来るクラブへの移籍を選択する可能性は捨てきれません。
余談ですが、ベルバトフがターンを決めたのは08‐09シーズンのウエストハム戦でした。
🤙 Berba with the spin + @Cristiano with the finish 💪 pic.twitter.com/04Maa9NeRL
— Manchester United (@ManUtd) April 13, 2019
何らかの縁を感じる
個人的にはユナイテッドに戻ってきて欲しいと移籍決定当初より言い続けてきましたがESPNによればハマーズだけではなくパリ・サンジェルマン、インテル、レアル・マドリーといった国外の強豪までもが彼に興味を示し始めているそうです。
(PSG, Real Madrid, Inter Milan monitoring Lingard's situation at Man United - sources)
同記事によればリンガードはチャンピオンズリーグでのプレーを希望しているとのことなので現在4位につけるハマーズがそのままシーズン終了時にそのポジションに居ればそちらへの完全移籍を選びそうな気もする
Standing up in the stands and sh*t hahahahah relax bro🤣you got @JesseLingard 💯 https://t.co/0isAOjOiLi
— R.Lukaku Bolingoli9 (@RomeluLukaku9) April 11, 2021
そしてロメル・ルカクがリンガードにSNSで言及した事にはもしかするとそのような裏があったり……
思えばルカクのユナイテッド移籍に際してエージェント・ポグバの噂がまことしやかに囁かれていましたが、今度はルカクがエージェントになるのかもしれない。