いろ覇のFM新参者~フットボールの虜

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football managerというシミュレーションゲームであれこれやっていきます。気付いたらユナイテッドの事ばかり書いてます

ミーガン・ラピノーのスピーチを受けて

どうも皆さんこんにちは、いろ覇です。

今回は女子サッカー界のスターが度々言及している賃金を巡る発言、そこから転じてフットボール界の今後についても考えていこうと思います。

 

 

 

はじめに

 

アメリ女子サッカー代表でこれまでに173試合のキャップ数(Wikipedia enより)を誇りプレー以外にもその発言でこれまで幾度も注目を集めてきたミーガン・ラピノー(Megan Rapinoe)。

 

彼女が常々口にしているフットボール界の男女の賃金格差是正についての個人的な考えを書いていこうと思います。

 

 

給料格差は男女差ではなく1990年代の2大ビッグバンが理由だと推測される

 

メーガン・ラピノーは『Equal Pay Day』(同一賃金の日)にホワイトハウスへ同じ女子サッカー選手のマーガレット・パース(Margaret Purce)と共に招待されて給料格差についてスピーチを行っています。

 

"I've helped, along with all my teammates virtually here, one teammate literally here today, win 4 World Cup championships and 4 Olympic gold medals for the United States," Rapinoe said.

私は全てのチームメイト、そしてここにいる1人(パース)と共にアメリカに4回のワールドカップ王者、4度のオリンピック金メダルをもたらしてきました。

 

"Despite all the wins, I'm still paid less than men who do the same job that I do." 

 これだけ勝利を収めたにも関わらず、私は同じ仕事をしている男性よりも給料が低いのです。

 

She continued ... "I know there are millions of people who are marginalized by gender in the world and experience the same thing in their jobs ... and I and my teammates are here for them."  

彼女は続けます。 「世界には、性別によって疎外され、仕事で同じような経験をしている人が何百万人もいることを知っています…… そして、私とチームメイトは彼らのためにここにいます。」

 これらはスピーチの一部ですが②に関してはその通りなので特にいう事はありません。

 

今回考えてみるのは①です。

彼女はアメリ女子サッカー代表がオリンピック、ワールドカップで勝者であり続けた事を理由に自身らの待遇改善を訴えていますが男子サッカー界で給料のインフレが始まったキッカケを思い返してみて下さい。

 

影響が大きかったのは

  1. 放映権マネー
  2. ボスマン判決

どちらも1990年代の出来事でそれまでは今のような何十何百億というお金が1人の選手を巡って動くことはありませんでした。

 

放映権料が跳ね上がったキッカケは有料放送、PPVの登場です。

イングランド プレミアリーグを例に取ると1992~1997年の放映権料は1億9千100万£

そして2016~2019年には51億£と20年で26倍以上に膨れ上がっています。

(参考:TV Rights in Football - Premier League Analysis | Sports Business institute)

 

入るお金が増えればその分使える金額も増えるという事でプレミアリーグは世界で一番商業的に成功しているフットボールリーグに成長しました(貧乏クラブはますます貧乏になる、パラシュート・ペイメントと言われる放映権料の分割払いシステムが理由でプレミアリーグからチャンピオンシップに降格したチームが翌シーズンの昇格争いで大きく有利になるなど多くの問題を抱えていますが本筋とはそれるのでここでは割愛)

 

 

ボスマン判決について

  • クラブとの契約期間が終わった選手の所有権をそのクラブは主張できない
  • EU内であればEU加盟国の国籍所有者の就労が制限されない”というEU労働規約をフットボール選手にも適用すべきである

 

という主張が欧州司法裁判所に認められたこの一件がキッカケとなってクラブ間の選手保有競争はそれまでのような強引さが通用しなくなり、良い条件を提示しなければ契約切れをもって選手に出て行かれるのでトップリーグでは給与が爆発的に上昇し、それに伴って契約期間も5年、6年という長期が当たり前になり移籍金ビジネスもこの契約期間の残り部分を買い取るという形に変化を遂げています。

それに伴い100億越えの移籍金も00年代以降は目にするようになりました。

 

余談ですが、Jリーグ開設当初にジーコドゥンガストイチコフなど海外のスター選手を獲得出来たのはこれらの影響が本格的になる前というタイミングも味方していました。

 

 

女子プロリーグには興行的な魅力が足りていない?

 

男性のフットボールで給与が跳ね上がったのは上記のような背景がありましたが、果たして女性のプロフットボールではこのブレイクスルーは発生していません。

 

アメリカの女子プロリーグを例にすると

 

  1. 2001年に初のプロリーグWUSAがスタート。当初は一定の人気を獲得しMLSに負けず劣らずの支持を集めたものの興行は伸び悩み2003年スポンサーの資金提供が打ち切られてリーグ休止。
  2. 2009年そのMLSの支援でWPSと名を変え再びプロリーグ開設。新規参入と撤退を繰り返す不安定な運営でチーム数も年度によってバラバラという状況でこちらも3シーズンでリーグ休止に追い込まれる。
  3. WPSを継ぐ形でNWSLが2013年に開幕。2020シーズンは新型コロナウイルスの影響でリーグが開催されなかった為直近は2019シーズンでチーム数は9チーム。昨年はNWSLチャレンジカップと名目したカップ戦を代替として開催。

というように興っては消えのサイクルを繰り返していて近年に入りようやく安定期を迎えたばかり。

 ラピノー氏の個人的な要求は尊重するが残念ながら母体となる団体には男性のプロリーグと同等の報酬を女性プロに払う体力が無いと考えられる。

 

 

同一の賃金を求めるならば同水準の働きが要求され、上記のスピーチ②に当てはまる方々は能力的に同程度或いは上回っているにも関わらず性差によって不当な扱いを受けているケースだと考えられますが、女子プロフットボーラーは男性プロフットボーラーと比較するとやはりフィジカルの差が大きく、技術では埋まらない差(フットボールそのものだけでなく興行的魅力も)があるので心苦しいのですがこれに当てはまらないのではないでしょうか。

更に言えば9チームのリーグ戦だと試合数には限界があり、実際に2019シーズンのリーグ戦は8×3のレギュラーシーズン24試合+プレーオフと比較すると数には大きな開き。

協会側もこれには対策を打っているようで2022年からは新たにロサンゼルスに本拠地を持つAngel City FCというクラブが新規参入を果たす予定らしい。

 

 

ただ、彼女が以前主張していた代表戦の報酬についてはアメリカの男子チームと女子チームでは後者の方が人気を得ていて近年の成績も上なのは確かに事実である部分も多いので同情はします。

報酬に関しても比較する先が欧州フットボールではなくアメリMLSならばマッチ数にそれほど差が無いので分かる部分もありますが彼女の普段の発言を見ているとどうやらそういう訳でも無さそうなので判断が難しい。

 

 

因みに、プレミアリーグにはシアン・マッシ―・エリスさんという女性審判がいるのですが、彼女はオフサイドラインの見極めがリーグ内の審判でも抜きん出て上手くファンの間でも実力を高く評価されています。

Embed from Getty Images  

 

彼女が正に②の代表例では。

実際に2011年にはプレミアリーグを放送するSkysportsのコメンテーター アンドリュー・グレイとプレゼンターのリチャード・キーズが彼女に対して"女性はオフサイドラインを知らない"などと性差別的発言をしたとして番組から降ろされる事件も起きています。

 

女子フットボールの地位・魅力向上にもっと協力すべきという提言には完全に同意

 

ここまではラピノー氏の発言を否定するような文章を書いてきましたが、彼女のように発言力がある人物が問題提起をする事自体は大きな意義があると思うのでこれからもそのままでいて欲しい。(ロナウドやメッシにまで喧嘩を売って軽くあしらわれるムーブはちょっと……ですが)

今回の内容はあくまでフットボール界の構造的な理由を元に彼女の発言を考察してみただけなので特に批判的立場を取っている訳ではありません。

 

今の状態のままで報酬を上げろという実現性の低い意見ではなく女子フットボール界の地位向上、魅力UPに向けて男子フットボール界にも協力して欲しいという主張には全面的に同意します。

ボールさえあれば性別・年齢・身体的特徴などに囚われず皆で楽しめるというのがフットボールの目標の1つだと思うので女子フットボールだけでなく、フットサル、ビーチサッカーブラインドサッカーなど関連する競技全体の発展に尽力するのが体制側に求められるものだと私自身は考えています。

 

これを言うと一部の過激派がやいのやいの言う事は承知の上ですが、レギュレーションを変更してみるのはどうでしょう。

例えば女子の試合を見ていて毎度気になるゴールマウスの大きさ、そしてコートの規格の問題。

 

ふわっとした何でもないクロスのようなシュートのような軌道のハイボールをGKが処理出来ずにそのまま失点に直結するシーンが大変多いのでせめてゴールポストの高さを変更してみてはと思う事がよくあります。

ただ、草の根レベルを考えるといきなりゴールの大きさを変えるのは難しいのでまずはプロスポーツか大学辺りで試験的に導入すべきか。

 

コートの大きさを変えるのも大体同じ理由で現状は男子と同じ大きさで試合を行っていますがより試合の展開と強度を上げる為に小さい規格を導入する事を強くおすすめしたいです。

完全に同じルールでやってしまうと単純な劣化版にしかならないのでここを弄れば狭いピッチ特有、つまり女子フットボール独自の戦術が生まれ差別化を図る事も可能になるのでは。

 

または、バスケットボールのようにボールサイズを1つ小さくするのもアリ。

小学生サッカーで使っている4号ボールを使えばキックの威力も上がるので上記の変更を加えなくてもダイナミックな試合が増えるかもしれない。