どうも皆さんこんにちは、いろ覇です。
今回は横浜DeNAベイスターズから読売ジャイアンツに今オフ、FA権を行使して加入した井納翔一、梶谷隆幸両選手についてスポットを当てた1週間前の記事で予告した通り、育成契約の悪用ともいえる人的補償に伴うプロテクトの対象外にすることを主目的としたと疑われる契約更改にまつわる話となります。
〈2選手の補強に関する記事はこちら〉
- そもそも育成契約の理念とは
- 甘い曖昧な処分は組織の信頼を貶める
- 監督自ら来季新人王の期待をかける選手が精神・技術で支配下登録の基準に満たしていないのか?
- 【追記】廻る因果、2年経っても制度改革の兆しはない
- あとがき
そもそも育成契約の理念とは
日本プロ野球選手会の公式ホームページにある育成契約・選手に関する各種資料を読む限りでは、育成選手という契約形態は文字通り支配下登録選手を目指して技術・能力及び一般常識を球団の指導受けて向上を図るための制度だと記されています。
日本プロ野球育成選手契約書、つまり育成契約で指名を受けた選手達が目にする一番大切な書類でも以下のように定義されています。
育成契約について
日本プロ野球組織を構成するセントラル野球連盟の構成球団およびパシフィック野球連盟の構成球団の年度連盟選手権試合に出場可能な支配下選手登録をめざし、球団に所属し、球団の指導を受け野球の技術、能力および品位あるマナーの養成等の一層の向上を目的にプロ野球選手として育成を受ける者
‐日本プロ野球育成選手統一契約書より‐
また、2011年には当時「伯和ビクトリーズ」という社会人チームに所属していた星野雄大選手を福岡ソフトバンクホークスが育成ドラフトで指名しようとした際、JABA(日本野球連盟。社会人野球を統括する団体)から「企業所属の選手の指名は技術向上、社会教育の理念に反する」としてNOサインを提示されたというエピソードも存在します。
(日本野球連盟難色 ソフトバンク“育成枠指名”断念へ― スポニチ Sponichi Annex 野球より)
これらの情報を鑑みると育成選手というのは支配下登録選手になるために技術・精神のどちらか、あるいは両方の向上が必要な者という定義が出来るのではないでしょうか。
それ故に近年のプロ野球界で頻発するリハビリ目的や人的補償に伴うプロテクトの対象から外す事を目的とした運用は理念に反したものだと思うので、早くNPB(日本野球機構)側から規制をかけるべきだと私は考えています。
そして新ルールを施行するにあたっては、過去何年かの違反も遡って罰則を与えるというのが統括組織として求められる姿勢ではないでしょうか。
甘い曖昧な処分は組織の信頼を貶める
反面教師になる例としてはマンチェスター・シティのFFP違反を巡る騒動です。
一度はUEFA主催大会の出場停止と3000万ユーロの高額な罰金が課せられたものの、その後CAS(スポーツ仲裁裁判所)に持ち込まれ出場停止処分は撤回となり、罰金も1000万ユーロに減額されたというのがその概要。
そしてその罰金処分の理由もこの件に対するマン・シティ側の非協力的な態度を取ったというもので、数々の疑惑の証拠が出ているFFP違反については”ハッキングにより流出したもので法的証拠にならない”と全くお咎めなしでした。
元々UEFAやCASに対しては疑念の声が上がっていましたが、この一件以降その不信感はより一層強いものになっています。
「重大なルール違反をしても捜査妨害に全力を尽くして1000万ユーロの罰金を払えばどうにでもなる。」という悪しき前例が作られてしまったFFPについては近い将来瓦解しているのではないかと私は見ています。
このようにクラブ側がレギュレーションの穴を突く姑息な手法を取るのはどのスポーツでもよく見られる現象なので、彼らの善意に訴えるのでは拘束力が弱すぎてあまりに無力です。
監督自ら来季新人王の期待をかける選手が精神・技術で支配下登録の基準に満たしていないのか?
巨人の例ではプロ1年目の堀田賢愼投手、2年目の直江大輔投手、山下航汰選手などまだ若く判断能力が未成熟な青年達にこのような人生を左右する選択をさせて契約を飲ませているのですから悪質度は高いと思います。
更に直江投手に関しては指揮官の原辰徳監督自ら来シーズンの1軍戦力として計算しているかの如く発言をしているのでこれは明らかにプロテクト外しの契約変更であったと答え合わせをしているようなものではないでしょうか。
~中略
育成契約となったが、原監督の期待は大きい。今シーズン終了を待たずに手術に踏み切った背景には、来季新人王をとってもらいたいという指揮官の希望もあった。術後の経過は良好で、9日にもキャッチボールを再開する予定。順調にいけば来春キャンプには万全の状態で臨めることになりそうだ。「けがが完治して、動けるようになってからが楽しみ」と、前を見据えた。
【巨人】直江大輔、育成選手から新人王だ…年俸は180万円増、原辰徳監督の期待大(スポーツ報知) - Yahoo!ニュースより
この発言は失言だったと思いますね。
これまで各球団が支配下→育成契約に変更してきたケースの建前としては「プロ野球にはDLリストが存在せず、長期離脱で戦力構想を外れた選手で70人枠が圧迫されている」というものでしたが、今回の場合には来春キャンプに間に合う程度の怪我で尚且つ来シーズンの戦力構想に入っている選手をただ単にプロテクト枠、あるいは選手登録枠から一時的に除外する為だけに取った策であることの証左となりかねません。
野球賭博騒動によるダーティーなイメージが未だに残るプロ野球界が本当の意味で信用できるクリーンな組織に生まれ変わる為には、このようなグレーゾーンを攻める狡猾な行為に対して迅速なルール改定と厳格な処分適用が必要不可欠です。
コロナ禍以前は週6日、6つの球場に数万人の観客が詰めかけていたように興行としてのポテンシャルは世界でも指折りのものを持っているので、どうか正しい方向に舵取りをして長期に渡る繁栄をしていって欲しいですね。
【追記】廻る因果、2年経っても制度改革の兆しはない
最初にこの記事を編纂したのが2020年のオフシーズン。あれから約2年経過しセ・リーグのペナントレースは2021,2022とヤクルトが2連覇を達成、(失礼を承知で)当時は考えもしなかった情勢になっています。
当時、巨人に獲得される側としてこの育成選手制度を利用したプロテクト枠からの回避の当事者の1人であった梶谷隆幸外野手は2021年度61試合、2022年度は1軍出場無しと怪我の影響もあって結果を残せず、22年オフに自由契約が言い渡されています。FA移籍時の契約内容は推定4年8億、まだ2年の残り期間が存在する中での宣告にはおどろかされましたが、育成契約に切り替えてチームに残留する見込みとのこと。
プロテクト外しと揶揄された手法を駆使して獲得した選手が僅か2年で育成契約を駆使した外される側に回るというのも何らかの因果を感じるものでありますが、個人としてはこの一連の問題に関して
この3つが大きなポイントであると考えており、今の不満を解消するには各球団のモラル任せにするのではなくNPB側からの積極的な介入が不可欠。これらの改革は、70人の支配下登録枠を変更する事に比べればそれほど困難であるとは思いません。
2年前と異なるのは育成契約になるのがFA補強で加入した選手というネームバリューと億越えの年俸で評価されている程の実績者が"育成"という違和感の大きさ。
プロ野球選手会の事務局長が日刊ゲンダイの取材に応じ、批判的な意見を述べている事からもこのやり方が問題視され、騒動が今後更に大きくなる可能性は十分考えられる。
あとがき
日本プロ野球選手会の公式ホームページ、流石に古代遺産臭が強すぎるのでそろそろリニューアルしてみては?(日本プロ野球選手会 公式ホームページ)
右スカと長年馬鹿にされてきたNPBのホームページも数年前に改修して今は大分マシになったのでこちらの時代に取り残されている感が余計に目立ちます……