どうも皆さんこんにちは、いろ覇です。
木曜日の対シェフィールド・ユナイテッド戦から中二日、両チームの本拠地があるリーズとマンチェスターの歴史的背景から嘗ては国内屈指のライバルマッチであったローズダービーがリーグ戦では03‐04シーズン第26節、2004年2月24日以来約16年10カ月ぶりに開催されることとなりました。
〈シェフィールド・ユナイテッド戦についてはこちら〉
カップ戦を含めても最後に戦ってから10年が経過していますが、未だにリーズ・ユナイテッドのサポーターはマンチェスター・ユナイテッドに対して激しいライバル意識を持っているようなので、この一戦は凄まじい熱量を持った試合になる事が予想されます。
試合プレビュー
歴史
まずはこの2チームが何故ライバル関係にあるのかおさらい。
時代は中世15世紀
リーズがあるヨークシャー地域を支配していたヨーク家とマンチェスターを含むランカシャー地域を支配していたランカスター家のイギリス王室内の主権争いによって約30年間続いた闘争、薔薇戦争がその由来とされています。
ヨーク家は白薔薇、ランカスター家は赤薔薇を紋章としていたことからその名が付きました。
そんな背景もあり、この2チームの対戦は1世紀以上続く因縁関係となっており、まだフーリガンがスタジアムに溢れかえっていた1970年代には両チームの対戦後に多数の逮捕者、負傷者を出すこともあったとか。
マンチェスター・ユナイテッド一回目の黄金期であるサー・マット・バスビー時代には両チームの中核選手がそれぞれリーズ・ユナイテッドの兄ジャック、マンチェスターユナイテッドの弟ボビーのチャールトン兄弟だったので、それもライバル関係を白熱させる要素の1つでした。
一方でこの2クラブ間の取引は1980年代辺りから活性になり、リーズからは”キング”エリックカントナやリオ・ファーディナンド、ユナイテッドからも中村俊輔選手のセルティック時代の恩師でユナイテッド在籍時にはストライカーとして活躍したゴードン・ストラカンや90年代のクラブでサイドアタッカーとして250試合以上に出場したリー・シャープ等がそれぞれのクラブに移籍しています。
試合前情報
マンチェスター・ユナイテッドはほぼフルメンバー。
戦列を離れていたエディンソン・カバーニもトレーニングに復帰しており、スールシャール監督も「彼はリーズ戦に出場できるであろう」と明かしています。
リーズ・ユナイテッドは今夏にフライブルクから1300万ユーロで獲得したドイツ代表CBロビン・コッホが膝の負傷で大抵でも2月まで戦線離脱。
CBでは同じく9月に2000万ユーロでレアル・ソシエダから加わったディエゴ・ジョレンテも欠場が予想されています。
他には中盤のアダム・フォーショウ、ガエターノ・ベラルディがそれぞれ長期離脱中でメンバー外です。
そして大きな変更点として、この試合からベンチ入り人数の上限が7→9に増えています。
スタメン
マンチェスター・ユナイテッド
ベンチ入り
3バイリー、6ポグバ、7カバーニ、8マタ、11グリーンウッド、26D.ヘンダーソン、27テレス、31マティッチ、34ファン・デ・ベーク
ダニエル・ジェームズがプレミアでは10月24日、チェルシー戦以来のスタメン入り。
もっと出来ると思う選手の1人なのでこのチャンスにしっかり応えて攻守にスプリントを繰り返して欲しい。
今日のメンバーはとにかくスピード重視で走れる選手を多く配置してきました。
リーズ・ユナイテッド
ベンチ入り
7ポベダ、11T.ロバーツ、13カシージャ、17H.コスタ、19P.エルナンデス、21P.ストライク、24L.デイビス、46J.シャッケルトン、49O.ケーシー
プレビューで触れたようにCBに怪我人が続出しているため、普段は主にRBを任される事が多いアイリングをこのポジションで起用してきました。
彼自身はCBで100試合以上の経験があるとは言え、183㎝と上背も真ん中で起用するにはやや頼りないものなのでマンチェスター・ユナイテッドとしてはこの部分を突いていくのではないでしょうか。
試合内容
出会って3分で2得点
個人的にはリーズの強力なアタッカーに苦戦しながら入る試合序盤をある程度覚悟していたのですが、その不安は僅か1分8秒で解消される事になりました。
カウンターからマクトミネイがDF、GKの裏をかく地を這うようなミドルシュートでマンチェスター・ユナイテッドに先制点が生まれました。
その興奮も冷めやらぬ3分、マルシャルのラストパスに反応したのはまたしてもマクトミネイ。
DFの間に侵入しGKと1on1になると今度は左足で冷静にゴールネットを揺らしました。
この一撃は流石元FWという感じのシュートでした。(飛行機パフォーマンスいいですね~)
ちなみに、1人の選手による試合開始から3分での2得点というのはプレミアリーグ最速記録だそうです。
ゴールラッシュ
瞬く間に2点のビハインドを背負わされ、プランが崩壊してしまったリーズでしたが、それでも時間経過と共にチャンスを作り始めます。
7分にはロドリゴのパスに反応したバンフォードにペナルティエリア内で決定的なチャンスが生まれますが、彼のシュートは外向きの回転がかかり枠外へ消えていきました。
バンフォードは18分にもハフィーニャのシュートのこぼれ球に反応し、今度はゴールネットを揺らしましたがこれはオフサイドの判定。
リーズが中々枠内へシュートを飛ばせず機会を逃していると20分、相手ペナルティエリア内でマルシャルがボールをキープし最後はブルーノがCBの股を抜くシュートでリーズにとっては戦意を削がれる3点目が早くも追加されることとなりました。
37分にはニアサイドを狙ったコーナーキックをマルシャルが頭でうまくファーサイドへ流し、そこに合わせたリンデロフが昨年12月9日以来約1年ぶりのゴール。
出来すぎなくらいの得点量産で久々に安心して見れるリーグ戦となりました。
ここまではいい様にやられていたリーズも41分、こちらもコーナーからCBのリアム・クーパーがポストに当たってゴールネットへ向かう完璧な軌道を描いたヘディングシュートで1点を返します。
このセットプレーでは180㎝台後半のクーパーに対して小柄なフレッジがマークについていたので完全なミスマッチ。
前半は4vs1、早くも5つのゴールが生まれる忙しい45分となりました。
後半に入ると開始から5分で両チームに1度ずつ決定機がありましたが、マルシャルのシュートは枠外、ハフィーニャのシュートはデヘアが往年の超反応でブロックしいずれもゴールにはなりませんでした。
走り回った21番は報われた
多くのゴールが生まれたこのダービーマッチで個人的に最も嬉しかったゴールが生まれたのは66分。
カウンターからドリブルでミドルサードを駆け上がったマクトミネイは斜めの動きでDF間のギャップへ駆け抜けるジェームズへスルーパス。
ジェームズは見事なファーストタッチでフリーになるとGKとの1on1で股を抜くシュートでリーグ戦では昨年8月のサウサンプトン戦以来1年4カ月ぶりの得点を生み出しました。
昨シーズンの終盤辺りから、ゴールを求めるあまりセルフィッシュなプレーを連発してしまう場面をよく目の当たりにしていたので、この一撃は本人のメンタルにも良い作用をもたらすのではないでしょうか。
この試合では51分にほぼPKなのではないかというプレーで何故かシミュレーションでイエローを提示されるシーンもあったので、鬱憤も溜まっていたと思います。
70分にはマルシャルがPKを獲得しブルーノがお馴染みのタイミング逸らしのキックでこの日2点目。
73分にはリーズ15番スチュアート・ダラスのゴラッソが生まれたものの、アウェイチームの反撃もここまで。
試合はホームのマンチェスター・ユナイテッドが6vs2で勝利しました。
(https://twitter.com/ManUtd/status/1340726538770235395より)
動画ハイライト
交代選手
60分 in:テレス out:ルーク・ショー
71分 in:カバーニ、ファン・デ・ベーク out:ラッシュフォード、ブルーノ
46分 in:J.シャッケルトン、P.ストライク out:M.クリヒ、K.フィリップス
72分 in:L.デイビス out:L.クーパー
データ
マンチェスター・ユナイテッドは今シーズン最多の26本のシュートを放ち、うち14本を枠内へ飛ばす素晴らしいパフォーマンスでした。
対するリーズ・ユナイテッドは17本のシュートを放ったものの、枠内シュートは僅かに3とフィニッシュの精度の差がこの大差の一因となってしまった感がありますね。
また、リーズは普段通りボールを保持して真っ向から戦うスタイルを選択したので、赤い悪魔が最も得意とする左サイドからの高速カウンターをまともに食らってしまう場面が幾度も見られました。
支配率やパス成功率で上回りながらこのスコアになってしまった要因はある意味意固地ともいえるほど頑固に自らの哲学を貫いたビエルサ監督が招いたものだとも言えるでしょうね。
しかしながら、外野に何を言われようと自分たちの強みで勝負するという一貫した姿勢は嫌いではありません。
xデータ
(参照:Manchester United 6 - 2 Leeds (December 20 2020) | EPL | 2020/2021 | xG | Understat.com)
こうしてみると壮絶な打ち合いですね。
リーズもペナルティエリア真ん中~左側、主にワンビサカのクロス対応の穴を突くような形で幾度もチャンスを生み出していたのですが、如何せん最後の精度が足らずに逃した数が多かったですね。
一方で歓喜の90分となったホームのマンチェスター・ユナイテッドはxG4.78で6ゴールを奪い納得の試合運びが出来ました。
欲を言えばマルシャル2得点、フレッジ1得点の計3つの決定機を確実に仕留めて得失点差を更に伸ばしたかったですが、まあこのスコアでケチをつけるというのも何なので、一先ずはこの勝利の喜びを堪能していきましょうか。
この試合のMVPはやはりマクトミネイ。
2ゴール1アシストとゴールに直結したプレーは言うまでもなく優秀な出来でしたが、細かいスタッツに目を移しても3回のクリアにパス成功率85.2%、ボールを保持しながら相手ゴールへ移動した距離も約194メートルとチーム最多の数値を記録し、チームの心臓ともいえるパフォーマンスを見せています。
試合終盤にハッスルプレーが過ぎて股関節を痛めてしまったのは気がかりですが、試合終了後には普通に歩行していたのでそこまで重くはないと信じたいですね。
影の優秀選手はマルシャル。
2つの決定機を逃してしまった事はマイナスですが、この試合ではなんと6ゴール中4ゴールで決定的な貢献を果たしており、チャンスメイカーとしての新たな一面を覗かせました。(20分のブルーノのゴールは公式記録こそ付きませんでしたがほぼ彼のアシストと考えていいと思います。)
この試合で稼ぎだしたxG+xAは2.37という素晴らしいスコアとなっており、WhoScored.comの機械採点では9.9。ほぼ完璧に近い評価が付きました。
振り返り
ここ最近のスールシャール監督は選手起用の組み合わせの妙によって試合を優位に進められる事が増えてきましたね。
元々プランAを構築することは割と得意である印象を持っていたのですが、ここにきてそれが一段と冴えわたっているように見えます。
後は試合展開によって臨機応変に策を講じられるようになると、もしかしたら長期政権を築き上げる人物になるかもしれない。
その為にも、アシスタントコーチにモウリーニョにおけるルイ・ファリアのような戦術眼に優れた参謀を配置して欲しいと心の隅で願う日々。
大敗したリーズとしては単なる敗戦以上に重くのしかかるかもしれないのが72分に交代で退いたCB リアム・クーパーの負傷度合い。
もしも彼の離脱期間が中~長期に及ぶものとなると遂に本職CBがチームから消滅する緊急事態となるので、今回の試合のように守備崩壊で大量失点してしまう試合が今後増加してしまうかもしれませんね。
この試合でもユースの選手が何人かベンチ入りしていましたが、場合によっては以前に未来のスター候補としてこのブログでも名前を挙げたノハン・ケネーの大抜擢も選択肢の1つとして考えられそうです。